綴夢

空翔ける虹、虹架ける魚 Span.3
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……そんな感じで、オレは今日、アイツとケンカした。

つーか、マジで頭にきていた。
結局、公園でそのまま別れて。
オレは今、自分の家に戻って来た。
オレには分からない、って何だ。
『には』ってなんだ。他のヤツなら分かるってか?
何アイツ、ソバカスのくせにオレを誰と比べてる訳?
オレよりも凄ぇヤツがいるって言いたいのかよ。
…オレよりも分かってるヤツがいるって言いたいのかよ。
「ったく!」
公園からここまで、いつも通りその辺りの女共から熱い眼差しとか甲高い声もあったけど。
今日はどれもウザくて。すっげ早足で歩いた。
それもまだるっこしくて途中から走っていた。
とにかく、無性にイライラしていた。
うちに着いたら着いたで、ドアの鍵はすぐ見つからないし。
やっと見つけた鍵も、何故か上手くドアを開けようとしない。
オレんちって、こんなに鍵開けづらかったか?
「く……っそ!」
半ば強引にドアを開けて、力いっぱい投げつけるように閉めてやった。
その勢いで靴も脱ぎ捨てた。
ついいつもの癖で、入ってすぐの壁の等身大ミラーに顔を向けたら、ぱねぇ形相のオレがいた。
不意打ちを見事に喰らったオレの頬には、ありえん色のありえん形が。
んだよ、この顔は。マジありえん。
つーかよ。

…んだよ、あの顔は。



オレはそのままリビングに入ってソファに身体を投げ出して。
そのまま体をのけぞらせて、天井を見ていた。
無言でいたら、ガラス越しに外の音が聞こえた。
正午の鐘だ。
まだそんな時間か。長いな。一日が。
この後延々と続く『今日』を考えると、当然のように溜め息が出た。
…今日、オレは何を買いに行こうとしてたんだっけ。
そう言えば買う物、特に考えてなかったな。
あぁ、起きて今日は予定ねーなって思ったら、ソバカスの顔が浮かんだんだった。
そんで、じゃあ行くかってうちを出たんだ。
ソバカスがキーキー言ってる姿、マジ面白いからな。
ちょっとからかって、そんで、買い物付き合わせて。
アイツも何か買いたい物無いかな。あるならそこに行っても良いな。
ついでにオレも何かそこで一緒に買っても良。
あちこちで会計するより一回で済ませた方が美しいんだよ。
あ、確かソバカス、リンと一緒でパフェ好きだったよな。
じゃあソレ置いてある店で休憩でもするか。
アイツいつも、甘い物食べてる時は幸福感MAXだしな。
そう言えば話題の映画も封切りしたんだっけ。
じゃあ見てやっても良いな。
アイツが好きそうなストーリーだったし。きっとまだ見てねーだろ。
じゃあ、買い物ついでに寄ってやるか。
ま、そんな感じで良。
うん。そんな感じが良。
って、考えてたんだった。
なのに、だ。
…んだよ、あの顔は。


と、携帯が鳴って、オレはソファから跳ね起きた。
慌てて取ったら、良く知った声だった。
『あ、サニーだよね?』
「………」
『サニー?!』
「……んだよこの毒」
よりにもよって、ココだった。
そうだし。着信音がそうだったし。
てか、ソバカスから電話かかって来た事ねーし。
そんなの分かってたんだよ。
でも、もしかしたら、ってあるじゃねーか。
つーか、オレの番号、聞かれた事ねーし。
でも、もしかしたら、って思ったんだよ。
結果、この毒だったけどよ。
そんなオレのムカつきぶりを、ココは気遣いもしないでまくし立てた。
『サニー?今一人か?何してる?何処にいる?』
「一人だし、何もしてねーし、家にいるけど何か文句あんの?」
電話の向こうでヒソヒソ話す声が聞こえる。
『てことは、ブログの事はもう知ってるか?』
「あ゛?」
『小松君からトリコたち経由でボクたちの所まで来た情報なんだけど。で、ボクも今確認したんだ』
「だから何だし?!グダグダ言ってんじゃねぇよ!」
オレのイライラはピークだった。
『怒らないで!冷静に聞いてくれよ』
「だから何だよ?!」
『これ、スクープって言うのかな?サニーの事、凄く面白く話題にされてるけど』
「…は?」
『心当たりあるだろう?!公園での事だよ!』
「公……」

イライラを通り越してクラっときた。
…………マジ、パネェ。

…確かに、オレは山奥暮らしの毒とは違うし。大食いでハント大好きな大男とも違う。
オレは街に。つまり人のいる場所にいる事が多い。
だからどっかの知らないヤツに写メ撮られても、ブログの記事にされてても、別にどって事ねーし。
オレのビューティーにかかればまぁ当然だろ?くらいに思ってたし。
有名税って思って、今まで気にもしてなかった。
でも今日に限っては………オレだけじゃねーし。
ちょっと…いやかなり……まずいよな。
「どんな感じで書かれてるんだし」
電話の向こうで、どっちから言ったら良いと思う?とか相談している声が聞こえた。
「テメェこの毒が!いちゃついてんじゃねーよ!」
『あっゴメンゴメン。じゃ、こっちから』
「おう。」
ま、ケンカしていると書かれているだろう事は明白で。
そんな事より、あのクリクリの事が何て書かれているのかが気になった。
そんで…ちょっとばかりソバカスの書かれ方に期待もしていた。
『”四天王サニーに平手打ち。次期四天王候補出現か?!”』
「………はっ?!」
『面白いよね、”次期四天王候補の男”だって』
「男って……えっ?!」
『ちなみに写真は平手喰らった瞬間の激写だよ』
「……………」
オレは頬を押さえた。
『もう一つはね、”子供に泣かれて困っている四天王サニーさん”、って』
「こ、こど………」
『サニーって子供嫌いだった?いじめちゃダメだと思うけど』
「……………」
『で、ぶたれたのと泣かれたのは同じ人物?どっちも相手の姿は不鮮明なんだよね』
「……………」
『サニー?聞いてる?サニー?!』
オレはグッタリした。



コドモジャナイヨォ・・・


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