綴夢

空翔ける虹、虹架ける魚 Span.1
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オレはいつだって、オレに正直だし。



「全っ然分かんねーし!」
オレは目の前のソバカスに言ってやった。
「分かって貰わないでも良いっ!」
ソッコーで返される返事と、そっぽを向いたソバカス。
ちょ、何でそうなるんだっつーの。
そこは『だから、』って戻すのがオンナとして美しいんだよ。
…って言おうとしたら、そのまま歩き出していたソバカス。
「ちょ!待つし!!」
「待たない!」
「待てって!も一回話してみろっつーの!!」
「嫌!」



◇◇◇◇◇

……そんな感じで、オレは今日、アイツとケンカした。

まったくあのソバカスは、いっつもオレの言う事に突っかかって。
てかこのオレにケンカ売るオンナなんか、リンとアイツくらいだし。
その前に、アイツ、オンナか?
オレのこの美しさを何とも思ってねーし。
スカートもはかねーし、化粧は全然しねーし。
ソバカスたくさん顔に散りばめて、髪も短いクリクリで、オンナっつーより、子供?
あ、でかい小学生!この言葉が一番調和するし。
クリクリチョロチョロ頭の上で暴れてる毛が頭を大きくして、細っこい身体を更に細っこく見せてるし。
本人は天然パーマとか言ってたけど、そんなんどうでも良。
チョロチョロはキューティクルが完っ全に足りないのが問題なんだって。
…………。
………………。
…まぁそんなソバカスを、オレはヒマさえあればいじりに行っている。
美しさは完璧足りないが、アイツがキーキー言ってる姿はかなり面白いし。
構うとキーキー以外にもパネェ動きがあれこれ出てくんだ。
今日もヒマだったし、買い物ついでにからかいに行ったんだが。
からかいついでに、いつもみたく買い物に付き合わせようと思ってたんだが。
今日は、今までとはちょっと違ってた。
…………。
笑えねーし。何だアイツ。
マジで意味分かんねーし。
てかあれ、分かるやついるのか?
いねーよマジで。
だって、だ。だってだぜ?
金魚、だ。
金魚ってあの、水の中でユラユラパクパクしてるやつだ。
まぁ泳ぐ姿はそれなりに美しいかもしれないけど?
そんな、たかが指の先ほどの生き物で、美容に良い訳でも希少価値が有る訳でもない、ただの金魚ってヤツ。
そんなモノの事で、あのソバカスは、ブサイクな顔を更にブサイクにさせて。


泣いてたんだ。



ソバカス?!


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