* お題他 *

□『バカップルへ30題』
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倉亮(+御春)・倉持視点
ラブコメの為、倉持のノリが軽めです。




* 25.バレンタイン *







バレンタインなんて、全然期待してなかった。
気が強くて負けず嫌いで、可愛いとか小さいとか言われるのが何より嫌いな亮さんにとって、ああいう女向けの行事なんて絶対無理。断固無視。

だから当然、付き合い始めて最初のバレンタインだからといって何もない。
そりゃあ寂しくないっつったら嘘になる。
あのエロメガネなんざ、俺が貰ってねぇの解っててわざとらしく自慢しに来やがるし。

しかも恐ろしい事に亮さんが近くに居る時を狙って来るもんだから、俺はむちゃくちゃヒヤヒヤしたぜ!
だってよ、あの人一瞬凍りついたんだぜ?メシ食ってる手がピタって止まって、浮かぶ笑顔は氷の微笑。
それに気付いてるクセに、恋人から貰うチョコは格別だのやっぱ春市は可愛いなぁだの!

その後何事もなかったように振舞ってくれたから良かったようなものの、バレンタインと弟という、亮さんにとっての二大タブーにズケズケ踏み込みやがったアイツに俺は本気で殺意を覚えた。


だからまぁ…しつこいようだけど、この行事は俺達には関係ない。
遠恋でもねぇのに、一番欲しい相手から貰えないのは寂しいけどさ、でも、しょうがねぇじゃん?

俺等男同士だし、亮さんの性格上望んでも無駄なの解ってるし。
揉めるんが解っててゴネても良いことねぇよな。
それよりちょっとは悪いと思ってくれたのか、この人から「今晩誰もいないから」と言外に誘われた事の方が俺にとっては大事件だった。

そう。モノとか言葉とかなくたって、亮さんのコト俺が解ってればそれで十分。

チラ、と仰向けのまま目だけで隣を伺って、俺は静かな寝顔に頬を緩めた。
日頃綺麗に弧を描いている唇が無防備に半開きになっていて、すっげぇ可愛い。
そもそもいっこ上には見えないけど、こうしてっと完璧年下。兄弟揃って確実に一つ二つ下に見える。


(ああ〜、やべー…。可愛いー…)


男同士で可愛いも何もあったもんじゃないが、そう思っちまうんだから仕方ない。
昨夜お誘いのまま何度もヤッて、亮さんのベッドにお泊りさせて貰って、しかもこんな無防備な寝顔見せてもらうとか最高のプレゼントだよな。

幸せに浸ってるうちに抱き締めたくてたまんなくなったけど、さすがにそれはマズイので寝返りを打って背中を向ける。
あんま見てて起こしても悪いし、顔見てっと我慢出来なくなりそうだし。

嬉しさのあまりつい激しくしちまったから、ニヤついてんのバレたらスゲー怒られるに決まってる。
大体寝たフリがバレんの恥かしいしな。

だから、ホントそれだけだった。それだけの理由で背中を向けた俺の隣で、静かに寝てる亮さん側の枕の重みが、ゆっくりとズレた。


一瞬解らなかったけど、多分こっちに頭を向けたからなんじゃ?と気がついて、俺はオオ…と目を開けた。
熟睡してると思った相手がこんな夜中に起きてたなんて、すげー偶然。
でも振り向いて確かめるにはリスクが高い。ただの寝返りにしては不自然な動きだと思うけど、ホントに寝てたら悪いし、そもそもこれが原因で起こしちまったら申し訳なさすぎる。


(このまま気付かないフリしてた方がいい…よな)


昨夜はせっかくの亮さんからのお誘い。朝まで幸せな気持ちでいたいじゃんなんて、ヤベェ俺、純さんの少女マンガ読みすぎたかもしんねー。
ニヤニヤを押し込めながらもう一度目を閉じた俺の背後で、不意に詰めてた息を吐き出すように、亮さんが細く長いため息をついた。

それは起こさなくて良かった系のものじゃない。
いやそれもあるとは思うけど、それ以上に緊張感とか罪悪感とか、気まずさみたいなもんが滲んでて、俺は昨夜の熱が急速に奪われていく気がした。


(何でため息なんかつくんですか?俺ら昨夜は久しぶりにいっぱい抱き合って好きだっつって、ため息つくようなことなんていっこもないでしょ?)


焦りまくる俺の背にぴたり、とくっついてきた亮さんが、重い息と一緒に呟いた。


「ごめんな、くらもち」


どきっとした俺に、そっと続ける。


「春市みたいにしてやれなくて」


それっきり黙ってしまった亮さんのため息の理由に、俺はようやく気が付いた。

バレンタインは、大手を振って好きな相手に自分の気持ちを伝えられる日。
でも基本的に女の行事。チョコ買いに行って渡すなんて恥ずかしい事出来っこない。
だが弟は御幸にしてやったという。あのエロボケがそれを自慢しに来たもんだから、罪悪感に苛まれてしまったのだろう。

俺はさっき以上に頬がニヤけているのを自覚した。少女マンガ風に言えば、胸がキューンとするってやつだ。

俺は、相手の為に恥ずかしい思いをしてまで頑張る事を、想いの差とは思わない。
亮さんは亮さんだし、弟は弟だ。だから気にして凹む必要なんて全く無いのに。

今度こそ躊躇わずに振り向いた。驚く亮さんの薄い唇に吸い付いて、頬にも、額にもキスをする。


「倉持…!起きて、」
「ました」
「…いつから?」


常夜灯の灯りだけでは解り難いけど、しかめっ面が少し赤らんでいる気がする。


「えっと、実はずっと」


すみません、とにやりとすれば、唇が尖る。その先端にもう一度キスをして、布団の中で抱きしめた。


「今日、誘ってくれてありがとうございました」


布団と亮さんの温もりで気持ちまで温かい。それを伝えて安心させたいって、俺ってどんだけこの人のこと好きなんだろう。
いや、どんだけ想ってもらってんだろう?


「何より最高のバレンタインでした」
「……何もないのに?」


まだ気にしている愛しい人の首筋に唇を当てて、いいえ、と言えば腕の中の体が少しだけ身じろぐ。


「頂きましたよ。最高に甘くて美味しいチョコレートみたいな亮さんを」
「……………そんな恥ずかしいことよく言えるね」
「いいんです!今日はそういう日でしょ!」


あーもう、今時少女マンガでも言わないようなこと言っちまった!でも亮さんが笑ってるからまぁいっか。
そう思い直して亮さんの上に跨ると、もう一度ゆっくりキスをした。








→ 翌日


「なぁ倉持。お前よくあんなハズカシイ事言えるな」
「…は?」


朝メシ食って気分良く歩いていると、追いついてきた御幸がニヤニヤと笑っている。


「甘くて美味しいチョコレートみたいなりょ、お、さんっ」
「は、はぁぁぁぁ!?」
「俺には絶対言えねぇな〜」


語尾に♪マークをガンガンにつけた御幸の横で、あわあわする弟を見れば嫌でも悟る。

亮さん……。
アナタが笑ってくれればそれでいい、って確かに俺は思いました。思いましたよ?
でもですね、弟に言えば絶対付き合ってるコイツに流れるに決まってるでじゃないですかぁぁぁ!!


くいくい。


頭を抱えて悶える倉持を他所に、大爆笑する御幸のシャツの裾を春市が引っ張った。


「ん?」


笑いすぎて目尻に溜まった涙を拭いながら見下ろすと、頬を赤く染めた可愛い恋人が少し不満そうに御幸を見上げ、


「僕も、兄貴に自慢したいです…」


消え入りそうな声でおねだりした。






-オワリ-






時期が合わなかったのもあって温存(?)していた倉亮+御春をちょいちょいと手直し。ようやく日の目を見ることが出来ました^^
ちょっと書き方が違いますね。というかラブコメなので倉持の語りが軽い。そもそも高校生男子の口調なんてよく解りません(身も蓋もない)

(何となく最後のはるっちに持っていかれた感がありますが)最後までお読み頂きありがとうございました^^


  Clap
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2014/2/14 ユキ☆

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