* お題他 *

□『バカップルへ30題』
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秋ということでハロウィン亮春。
珍しくはるちが積極的ですー。





* 29.秋 *






「ね、兄貴」

「んー?」

「秋のイベントって何だと思う?」


壁に凭れて雑誌を捲っていた春市が、突然そんな事を言い出した。
いきなり何を言い出すんだか。と見やった顔は、雑誌に向かったままで何考えてんだかサッパリわかんない。


「…紅葉だろ?」

「紅葉はイベントじゃないじゃない」


とりあえず様子見でつきあってやれば、ムスっとした声で春市が言う。
何、せっかく後輩達を追い出したってのに、ゴロゴロしてんのがそんなに不満?


「じゃあ何さ」

「冬と言えばクリスマスでしょ?あとお正月」

「箱根駅伝も正月だね。あと高校サッカー」

「去年実家で一緒に見たよね」

「年末から始まるから、三回戦が限界だけどね。…って何が言いたいわけ?」

「じゃあ春は?」

「…お前ね、」


こっちの質問に質問で返され、溜息をついた俺の代わりに春市が続ける。


「卒業式とか入学式かなぁ」

「…その前に雛祭りがあるじゃん。あとホワイトデーも」

「どっちもあまり関係ないなぁ」


よく言うよ。可愛いーって言われてバレンタインに結構貰ってんじゃん。
まぁウチの中学強かったし?レギュラー張ってれば普通だけどね。


「じゃあ夏は?」

「甲子園、だよね」

「当然」


話しの流れで振ってやれば、春市が嬉しそうに乗ってきた。

秋から始まって、冬、春、夏。
こうなればこの話題の終着がどの辺なのか見えてくる。

って言ってもこんな会話を振ってきたのが純や倉持だったら一発シメて終わりだけど。


「じゃあその辺を考慮して、秋は?」

「読書の秋」

「もぅ!」


解ってたけどしれっと答えた俺に、春市は頬を膨らませてポケットに手を差し入れた。
焦れた手の中には、袋入りの飴。それを破くと俺の口の隙間に差し込んでくる。


「何?」

「秋と言えばコレでしょ」

「Trick or Treat?」


やっぱね、と思いながらも訊ねれば、春市は悪戯っぽく頷いて破いた袋を俺に見せた。

全体的に黒い包みに描かれてるのは、ありきたりなオレンジ色のお化けかぼちゃ。
その怪しげなジャックなんとかランタンだけで、その中身も押して知るべし。着色料バリバリな飴の味は、夕食後にひと口貰った増子のかぼちゃプリン以上に微妙だった。

そんなものを食べさせられたからってワケでもないけど、味と同じ表情で春市を見れば、何だか緊張した目がこっちを見てた。
そのままムスッとしてたのが嘘みたいに頬を染めて、一個ずつ区切るみたいに決まり文句を口にする。


「そう。トリック、オア、トリート」

「でもこれをくれたってことは、春市は“イタズラ”されたくないんでしょ?」


それとも俺に訊いてんの?と唇から飴を覗かせる。小さな三角錐の太い所を挟めば落としにくいとはいえ、注意しつつ口の中に引っ込めた。


本当は、ハロウィンの話しだって感づいた時から春市の言いたい事は解ってる。
むっとした顔も、俺を無視して続けた会話も、全部これを言いたいがため。

『貴重な二人きりの時間を有意義に過ごしましょうよ』ってこと。

でもさ、折角お誘いしてくれるなら、ちゃんとするべきじゃない?
もじもじと可愛い顔してれば、欲しいものが貰えるなんてちょっと甘い。…そりゃあ揺れてないと言ったら嘘になるけど。


そしたら春市、俺の予想を跳び超えて、ううん、と首を横に振ると舌の上の飴を捕まえるようにキスをしてきて。


「I want both “Trick and Treat”…なら?」


つん、と三角錐のソレをつついて唇を離す。
僅か数ミリのところで動く唇と甘い香り。バッターボックスでしか見せない、獲物を狙うみたいな鋭い目が長い前髪の向こうに覗いてて、やられた、春市にしては上等じゃん。

カンペキに煽られた自分に苦笑して、だけどこんな風に両方欲しい、なんて誘われたら、だったら。


「……if you wish、でどう?」

「ん、…っ」


答えを待たずに応戦した。



この後は飴がなくなるまでキスをして、甘い甘い夜のはじまり。






-オワリ-







ギリ間に合いましたハロウィン亮春。
ちょっと解りにくくてすみません;はるちが飴をくれたから、亮介さんはイタズラしないよと言ってます。
でもいつも控えめなはるちに「イタズラもお菓子も」なんて誘われたら、そりゃ亮介さんも前言撤回(?)。「お望みならば」になりまっせv

…英語は雰囲気でお願いします!(苦笑)



ご来訪ありがとうございます^^

2009/10/31 ユキ☆




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