* お題他 *

□『夕焼けはときどき優しい・2』
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『夕焼けはときどき優しい』 の続き、御亮Ver。御幸視点

笑ってるのに笑ってない。上手く隠してるつもりですか?














俺のポジションというのは唯一全体を見渡せる場所で、敵味方全てが目に入る。
今日のあの人は調子が良さそうだとか、正直身が入っていないとか、良くも悪くも見えてしまうのだ。

だから今日の練習試合で、丹波さんの後ろを守る小柄な先輩があえて左に意識を向けないようにしているのも解ってしまった。

とは言え流石は亮介さん。どんな気持ちの揺れがあるのか知らないが、プレーに支障をきたすようなことはしない。
であれば俺には関係ない。ベンチで見せる哲さんと純さんとの掛け合いにひずみが見えても、笑っているようで目が笑っていなくても口を挟む気は全くなかった。


はずなのに。


「亮さん」


試合を終えて寮に戻る道中、純さん達と別れ1人になった亮さんに気がつけば声を掛けていた。


「何?」
「えっと、今日はお疲れ様でした」
「うん。御幸もね」


見事なポーカーフェイスで亮さんが微笑む。

多分真正面から見てなかったらきっと俺は気が付かないし、現に今もそれらしい違和感を感じない。
気のせいだったのかも、と思ってしまうぐらい変わらない亮さんを気にしつつ隣を歩く。


「ところで、相変わらず御幸は塁に誰もいないと仕事しないね」
「う…。面目ないです」
「チャンスはさ、自分がものにするだけじゃなくて自ら作るもんなんじゃないの?」
「そう思います」


さすがはチャンスを作る二番打者。ごもっともな意見に反省しか浮かばない。

しかし素直に頷く俺に特別興味を感じないのか、亮さんは「わかってるならそうしなよ」と言い放ち立ち止まった。
いきなり足を止めた先輩を、一歩先に進んでから振り返る。ポケットから鍵を出そうとしている姿に、亮さんの部屋についたことに気がついた。


やっぱり俺の気のせいだったらしい。
考えてみれば亮さんが純さんと哲さんを避けるわけがない。
試合でもベンチでも移動のバスの中でも普通だったし、きっと大したことじゃないのだろう。

とりあえずチームメイトとして状況確認が出来たのは良かったと思う。
とんだ説教を受けてしまったが事実なので仕方がないし。


やれやれと部屋に戻ろうとした時だった。

じゃあ失礼します、と口を開こうとした僅かな隙に、亮さんが取り出した鍵を差し込もうとした拍子に。
どこからともなく大きな声が降って来た。


「おい!亮介!」
「!」


上の廊下の手すりから身を乗り出した純さんがこっちに向かって叫んでいる。
びくりとした亮さんが手にした鍵をチャリンと落とした。


「今晩御幸の部屋に来いよ!哲も来るし、この間言ってた映画見ようぜ!」
「…嫌だよ。俺はね、映画は静かに観る派なの」


顔を上げずに屈みこんで鍵を拾う。伸ばされた指が一瞬震えたように見えた。


「コメディ映画は皆で見た方が笑えるだろ?つうわけで夜行くからな、御幸」
「…何で毎回俺の部屋なんスかね」
「さあね。お前んとこ2人部屋だから丁度良いんじゃないの?」


言いたい事だけ言って顔を引っ込めた純さんに苦笑しつつ、立ち上がった亮さんをへらりと伺う。
固い口調で再び鍵を差し込む亮さんは俺を見ようとしなかった。


前言撤回。
とりあえず何かあったのは間違いない。

純さんと、哲さんと、亮さん。
ケンカにしては純さんが屈託なさ過ぎる(隠し事出来ない人だからすぐ解る)し、哲さんも右に同じ。

ということは亮さんだけが意識してるということか…。


「御幸」


考えをめぐらす俺に亮さんが貼り付けたような笑顔を向けた。


「変な詮索しないでよね」
「えっと、何も言ってませんけど?」
「何か言いたげな顔と沈黙なんだけど」
「あー…すみません」


ばれたか、と思いつつ正直に謝って頬を掻く。

いつも通りな純さんと哲さん。その2人を意識して、一緒に居たくなさそうな亮さん。
その三人を思い浮かべたとき、あり得ない考えが浮かんでしまった。


(まさかとは思うが、まさかとは思うが、三角関係…)


いやいやまさか!何考えてんの俺。ありえねぇって。


「…ははっ」
「御幸?」
「すみません。ところで夜どうします?」
「観たい奴だけ観ればいいんじゃない?」


小さく笑った俺を気味悪そうに見た亮さんに、慌てて話しを蒸し返す。
ぶっちゃけ浮かんだ考えを確かめたくていう辺り我ながら性格が悪いと思うけど。

それを見越してなのか、僅かな間も空けることなくどうでも良さそうに亮さんが鍵を回した。
引き抜いてドアを開ける前にとん、と片手を扉に当てる。

咄嗟に作った腕一本のつっかえ棒なんて、ドアを引けば簡単に外れてしまう。でもそのまま亮さんは顔を上げた。
邪魔、と睨まれる前に早口で言う。


「ですよね。じゃあお願いがあるんですけど」
「お願い?」
「適当な所でゾノの部屋に逃げません?人質として降谷と沢村を用意しますんで」
「…1人で逃げれば?」


すかさず素っ気無い亮さんに探りをいれる。


「行かないのも気にしてるみたいで嫌だけど、ずっと見ていたくはないんでしょう?」
「っ、」
「っていうか、亮さんが一緒に逃げてくれると助かるんですよねー…なんて」


あまりにもストレートにぶっこんだので交わせなかったのだろう。会話の狭間に織り交ぜた一言に亮さんが息を呑んだ。
その様子と外した視線に疑念が確信へと変化する。


やがて、ふう、と亮さんが息をついた。

まんまと探られて見破られた。今更取り繕ってもどうせ無駄。
そう思ってるのが丸解りなため息をついて、目の前の人がわずかに俯いた。

髪の色と同じ淡い色の眉毛に長いまつげ。
一年中外で運動してる割に滑らかそうな頬。
鍛えてるだけあって華奢じゃないけど小さな体。


(確かに改めて見ると綺麗な顔してるし、抱き締めるよりは抱き締められるほうがあってるかも…)


そんな下世話な想像がバレたのかと思うようなタイミングで手刀が頭に落ちてきた。


「いってぇ!?」


条件反射で両手で頭を抱えうずくまる。
そういや、亮さんの直接攻撃をくらったの初めてだ。
いつも純さんと倉持と沢村が受けてたから知らなかったけど、それなりには加減してたんだな。


「御幸って、……やっぱムカつく」
「普通本人目の前に言いますか?」
「思ったことを言っただけ。それよりそこ邪魔。どいてよ」
「すみません。じゃ、夜待ってますね?」


心底嫌そうな亮さんに、約束、と笑って踵を返す。
背後で「絶対行かない!」と叫ぶ声がしたけどいそいそ角を曲がって退散した。


亮さんは純さんが好きで、純さんは多分哲さんが好き。自覚があるか知らないが、きっとそこは両想いなのだろう。
それに亮さんは気付いてしまって…みたいな男同士の不毛な三角関係、確かに途方にくれるしかないよなぁ。


(…まぁ、俺には関係ないけど)


そうだ、関係ない。関係ないんだから関わらなきゃ良かったのに。
先輩達の間に何があろうと、プレーさえ噛み合えば気にする必要ないんだから。

でも、三人の関係に気付いた上でわざわざ踏み込んでしまった。
上手く隠してるつもりで、全然隠せていない人を1人にしとくのが嫌だった。

それはきっと、いつも気丈な先輩の弱っている姿が珍しくて、だけではないことぐらい(認めたくないけど)解ってる。



(…………取り合えず、)


風呂に入って落ち着こう。
このあり得ないモヤモヤも長い睫毛が影を作った憂い顔も、風呂に入ってサッパリすれば忘れるはずだ。


そう、殆ど祈るような気持ちで部屋に戻った。









夕食後。


「なぁ、御幸どこ行ったんだ?」
「風呂だそうです」
「は?メシ前に入ってなかったか?」
「なんか煩悩を落とすだの気の迷いだのブツブツ言ってましたけど」
「何だそりゃ」
「やらしーツラしてますからね!ヒャハハ!」
「一生風呂に入ってればいいのにね…」
「りょ、亮さん?」









-オワリ-






『夕焼けはときどき優しい』 の続き、御亮Verです。
亮介さんクラスタの私としては、夕焼けの切ない亮介さんを放っておけず、続きを考えてみました。

亮介さんを幸せにしてくれるのは、元々の本命はるちか、鉄壁の相棒倉持か、まさかの御幸か、と考え御亮デーが目前だったという理由で御幸になりましたΣ
なので倉持だったら、はるちだったら、と他のVerが出てくるかもしれません(亮介さんを幸せにすることしか考えていない亮介クラスタは私です)


御亮、もっとはやりますように!!

(それから御幸が2人部屋というのは妄想です)



最後までお読み頂きありがとうございました^^

  Clap
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2014/2/5 ユキ☆


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