* お題他 *

□『おはようの代わりに、きみにイタズラ』
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「うえ〜〜」


自室のドアを開いた途端、襲ってきた熱気に倉持は呻いた。
目の前に広がるグラウンドから立ち昇る熱に、今日も暑くなりそうな予感がして自然と盛大な溜息が漏れる。


「何朝から溜息ついてんすか?」


のん気な声を出した沢村が、靴を引っ掛けて後に続く。
なんとなく鍵をかけ終わるまで待ってやり、並んで食堂まで歩き出した。


「あ〜〜〜、あっちぃな〜〜」


言っても仕方ないのは解るけど、言わずにいられる暑さじゃない。
Tシャツの首元に風を入れる倉持に、沢村が全くだと頷いた。


「東京の夏は暑いって聞いてましたけど、思った以上っすね」


そう言いつつも、倉持より格段元気に沢村が言う。
そのケロリとした様子に倉持は「ん?」と眉を寄せた。

確かコイツは長野県民。長野っつったら避暑地にもなるぐらいだし、こっちより全然涼しいんじゃないか?
そりゃあ降谷みたいにヘバられっぱなしも困るけど、この元気さはおかしいだろ…。

そう首を傾げるがすぐに結論に到達する。


「…あー。バカは暑さも感じねーのか」

「へ?」

「いや何でもねー。……ぉ」


きょとんとする沢村に気にすんなと手を払った倉持は、角を曲がった先に立つ同級生と後輩に小さく声を上げた。
坊主頭にいかつい顔の同級生と、やたら可愛らしい明るい髪の後輩が部屋の鍵を閉めている。

アイツ等もメシ行くとこか…。

手の中で鍵を探す前園と、その奥でちょこんと待つ弟くん。
あっちも同部屋。こっちも同部屋。だから自分と沢村が一緒にメシ食いに来るのが普通なように、コイツ等が一緒にいても全然違和感ないんだけど。

でもアイツ等、なーんか同棲カップルみてぇじゃね?

別にイチャついてるわけでもないのに、面白くない考えが浮かぶ。
そんな自分に苛ついて、倉持はまだ首を傾げている沢村を置きざりに2人の背後に回りこんだ。

鍵とマスコットのチェーンが絡まったのか、四苦八苦している前園とそれを覗き込んでいる弟くん。
こっちに気がつく素振りもない。

更にむかついた倉持は、ターゲットの真後ろに移動した。
気にいらないのは前園だが、不思議とイタズラしてやりたいのはそっちじゃなくて。

だからガキみてーに、低い膝の裏にガクンと一発ぶちかます。



「うわっっっ!?」

「あ!?倉持!?」

「ヒャハハ!モタモタしてっとメシなくなんぜー?」


膝を叩きこまれた弟くんはその場でガクっと膝を折り、隣の前園が慌てふためく。
それを尻目にスッキリと、両腕を頭の後ろで組んだ倉持はとっとととその場から退散する。


「倉持先輩!何するんですかもぉーっ」

「…あ!暑さも感じねーって俺の事かよ!」


立ち上がった弟くんの文句と、ようやく気がついた沢村の吠え声が重なって倉持はくつくつ笑って天を仰いだ。



「あー今日も平和だぜ」

「何が平和なのさ」


思わず呟いた倉持に、どこで見ていたのか憮然とした声が掛かり。
同時に少し下からぎゅっと耳を引っ張られたけど、これもまた御愛嬌だと倉持はお目付け役に両手を合わせた。






-オワリ-





まだまだ淡い気持ちの倉持が、はるちにちょっかいを掛けて亮介さんに怒られるというお話(笑)
そのわりに最後しかない亮介さんとの絡みの方がしっくりくるのは、私がそちらの人間だからですね(笑)

こちらはお題サイト:確かに恋だったさんよりタイトルをお借りしました。(いつもいつもありがとうございます!)
『きみにイタズラ』というシリーズのひとつ目なんですが、
好きだからイタズラしちゃう、なんて小学生みたいに可愛いヤツは倉持しかいないっす♪
そしてイタズラされるのはダントツではるち!皆にイタズラされてしまえ!(オィ)
だって亮介さんにイタズラするような怖いもの知らずはいなそうだしさ…(笑)


最後までお読み頂きありがとうございました^^


2010/07/24 ユキ☆




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