天上の花 〜君へ〜
□ソラトキミト
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「あ、そういえばさ、もうすぐ春祭りの時期だよな〜」
ことの始まりは、昼休みのこのロックオンの一言だった。
すると傍らに座って、小さな丸いおにぎりを頬張っていたアレルヤがぽん、と手を打つ。
「あぁ、そうだよね!!」
「もうそんな時期かよ……」
めんどくせぇ、とハレルヤは頭をかりかり掻きながら、ひょいっとアレルヤのお弁当から玉子焼きをつまんで口に放り込んだ。
「あぁ! ハレルヤってば、それ僕の!!」
「ちまちま食ってるからいけねーんだろ」
「だからって……」
「食事中は静かにするべきだ、アレルヤ・ハプティズム」
「ティエリア〜……」
ティエリアに叱られたアレルヤは、しゅん、と肩を落とし、恨めしそうにハレルヤを睨む。
「まぁま。俺のコロッケやるからそんな顔すんなって」
ロックオンが、自分のお弁当の中からコロッケをアレルヤに渡して苦笑してる。
意外にも、ロックオンは料理上手で毎日お弁当を持ってきているらしい。
………って、そうじゃないだろ。
「なんでみんな普通に僕の席取ってるのさ!!」
『え?』
みんな、「なんでお前怒ってるの?」って表情だけど、怒りたくもなる。
ちょっと購買にパンを買いに行ってただけで、僕の席は―――何というか、女の子の集団に占拠されていたのだ。
「え? じゃないだろ!? 僕どこでご飯食べればいいの!?」
すると、僕を横目で睨んだティエリアが不機嫌そうに言った。
「一言言わせて貰うが、元々この席は、私がロックオン・ストラトスと食事する際に使っていた席だ」
「でも……」
するとロックオンが申し訳なさそうに両手を合わせて頭を下げる。
「悪ぃ沙慈! でもほら……」
そして何故か、ぽんぽんと自分の膝を叩くロックオン。
「お詫びにお姉さんの膝に乗っていいからさ?」
「いいよ!!」
慌てて首を振ると、ロックオンはふぅん、と目を細めて僕をじっと見つめてきた。
「じゃあ、アレルヤかハレルヤがいいのか?」
「ふぇ!?」
「はぁ!?」
それぞれの声を上げて、目を丸くする双子。
「確かに。この二人にはさすがの俺も敵わないしな……」
主に胸、と付け足して、ロックオンはふむふむと満足げに頷いている。
「なんでそんなことになるんだよ!!」
「あっはっはっはっはっ」
僕がますます赤くなって否定すると、ロックオンは愉快そうに笑った。
僕ははぁ、とため息をつくと、少し肩を落として彼女達に背を向けた。
すると、一番早くに視線を上げたハレルヤが怪訝そうに眉を寄せる。
「あん? どこ行くんだ沙慈」
「中庭。みんなと話してるとご飯食べ損ねちゃうからね」
そして教室を出ようとした時、笑いを引っ込めたロックオンに呼び止められた。