―――白く細く、糸の月。
桜ははらはら散っていく。
人のいなくなった学校は、昼間の喧騒とは遠く離れて、静まり返っていた。
それでも、わたしは怖くなんてなかった。
こわいものなんて、たくさんみてきたから。
暗くて静かな学校ぐらい、少しも怖くなかった。
けれど、わたしは震えていた。
寒くもない、春も半ばの夜なのに、わたしはおかしなほど震えていた。
あぁ、わたしはこわいんだ。
初めてそう思って、おかしくなる。
もちろん、怖いのは学校なんかじゃない。
こわいのは、そこでまつモノ。
そこに立っている影。
闇の中から腕が伸びてきて、そっとわたしを抱きしめる。
わたしはなにもいわない。
『それ』もなにもいわない。
でも、それでいいんだ。