腰に回していた腕に力を込めて斎藤の身体を引き寄せ、深く口付ける。
腰紐を解き、襦袢に手を掛けた。

「…んんっ…あ、」

衣擦れの音、荒い息遣い。
暗い御堂の中、僅かな隙間から零れる光が斎藤の白い肌を際立たせる。

露わになる首筋、鎖骨。

夢中で吸い付くと、斎藤の身体がぴくりと反応した。ほんのり桜色に染まる身体。

「斎、藤…」

「…あ、…しん、ぱ…ち…」

こんな時、何て言えばいいのかなんて分からねえ。ただ、お互いの名を呼び、夢中で肌を合わせるだけの稚拙な行為。
触れ合った指先から伝わる熱が、俺の全身を溶かしちまいそうで。
溶け落ちてしまわないうちにと、必死で斎藤を求めていた。

下帯の上から斎藤自身を撫でる。

「……っ!」

俺の着物を掴む斎藤の手に力が籠もった。
唇を吸い、既に硬くなりつつある自身を下帯の上からゆっくりとなぞる。何度も手を動かすうち、斎藤の息が上がり、もぞもぞと腰を擦り付けてきた。
下帯を解くと、シュルシュルと音を立てて斎藤の脚の間を滑り降りる。

「はっ、あっ…!」

直に触れて扱いてやると、斎藤の膝がガクンと折れた。慌てて腰を抱き止め、壁に身体を押し付ける。

「俺に、掴まってろ」

そう言って斎藤の腕を俺の首に回す。斎藤は、ぎゅうとしがみついた。

耳許にかかる斎藤の息。
時折零れる甘い声。

…堪んねえ…

扱く手を速める。

「…あ、ゃ、だ…っ!新、ぱ…っあぁっ!」

「やだ、じゃ、ねぇ、よ…!良い、って言え、って…」

余裕なんか無かった。けど、余裕があるように見せてねえと、ダメになっちまう気がした。
俺も。
斎藤も。
必死で抑えて均衡を保っていたはずの何かが、壊れちまう。
だから俺は笑った。
好きだと囁いて笑った。

「あ、ぁあっ!…は、あ!」

斎藤が更に強く俺にしがみつく。
絶頂が目前なのかもしれない。
先程よりも息が乱れ、上気した顔、潤んだ瞳。

「しんぱ…っ!んっ!あ、ぁあっ!」

扱く手を更に速めてやると、びくりと身体を震わせて斎藤は達した。
掌にどろりと熱が放たれる。

力が抜けたのか、斎藤が壁にもたれかかり俺の首に回していた腕が解けていく。
それを片手で支え、とろんと惚けている瞼に口付けた。

「…ん…新、八…」

指を後蕾に這わせる。
先程斎藤が放った熱のおかけで、斎藤の小さな窄まりはすんなりと俺の指を受け入れた。

「…は、あ…」

入口をゆっくりと解していく。
再びむくりと擡げてきた斎藤自身を軽く扱きながら、徐々に指を深く沈めた。

「んあっ…!はっ…!」

ある箇所を掠めた瞬間、斎藤の腰が跳ねた。俺の首に回された腕に力が籠もる。

「ここ、か?斎藤」

「あっ、はぁっ…!新八っ!」

ひくひくと斎藤の窄まりがいやらしく蠢き、俺の指に吸い付いてくる。

もう限界だった。

俺は指を引き抜き、斎藤の後蕾に自身を宛てがう。
ぐいと斎藤の片足を持ち上げ、窄まりの中へ自身を埋め込んだ。

「…きつっ…」

斎藤の蕾は小さく、先の方を挿れただけできゅうきゅうと締め付ける。

「あ、あ…!しん、ぱち…っ!」

「…力、抜け、って…」

しかし斎藤はぎゅっとしがみつき、益々力を籠めるばかりで、締め付けは更に強くなった。

「…くっ…!」

床に組み敷いちまうのが一番良いんだろうが、あいにく御堂の床はあちこちささくれ立っていて、転がればそれだけで怪我をしそうだ。

斎藤の顔が見てぇし…。

「…斎藤、しっかり、掴まって、ろ…」

「…!何、を…っ」

俺は両手で斎藤の脚を掴んで身体を持ち上げる。
困惑する斎藤に軽く口付け、後蕾に自身を宛てがうと一気に貫いた。

「ああっ!んっ…!」

腰に斎藤を乗せ、膝裏を抱える。
壁に背中を押し付け、斎藤が最も感じる所を突き上げた。

「…んっ!ああっ、ぁっ!」

斎藤のナカは暖かく、ねっとりと絡み付いてくる。
俺が動く度締め付け、それがひどく気持ち良い。

「…はっ…斎、藤…」

夢中で腰を振り、斎藤を感じる。

「新、八っ…、お、ちる…ぅっ!」

斎藤が落とされないようにと必死に俺にしがみついた。
目前に斎藤の顔。
眉根を寄せて、頬を染めて。
零れ落ちる声は、甘い喘ぎ。
愛しい。
なんて愛しい。

「…斎、藤…こっち、向け…っ」

しがみつき、肩に顔をうずめていた斎藤が、余裕の無い表情で俺を見る。
荒い息を繰り返す唇を塞ぎ、咥内を弄った。

「んんっ…!ふ…」

御堂の中に響く水音。
ギシギシ軋む床。
俺の腕の中に感じる温もり。
今俺の感じる物全て、焼き付けて。

「好、きだ。斎藤…」

途切れ途切れに伝えると、斎藤はこくこくと頷いた。
限界が近付き、無我夢中で激しく腰を振る。

「…ぁ、も…、ふ…っ、ぁあっ…」

斎藤の身体が弓形に撓る。締め付けは更に強くなり、俺も我慢出来ずに斎藤と共に果てた。

「…は、…はぁ…」

びくびくと震える身体で抱き合ったまま、俺達はしばらく動けなかった。

ゆっくりと抱えていた脚を降ろすと、斎藤は一瞬ふらついたが、支えようとした俺の手を掴み小さな声で大丈夫だ、と言った。

その後はお互い無言で、乱れた着物を直した。


別れの時が近付いてる。

もっと一緒にいたいと思っても、それを口にする事は出来ねえ。
何かを話そうにも、何を言えばいいのか分かりゃしねえ。
俺はただ突っ立ったまま、身支度を整える斎藤を眺めていた。

「……新八」

沈黙を破ったのは斎藤だった。
シュルリと白い襟巻を巻き付け、静かに俺を見上げる。

「なんだ?」

「……すまない」

「…なんで謝んだよ?」

斎藤は俺に近付くと、細い指先で俺の頬をなぞる。

「…もうすぐ、終わる…。もうすぐだ…」

「…?何が終わるって?…なぁ斎藤、もう少し分かるように言ってくんねぇか?」

「…すまない。…今は、聞くな。…聞かないでくれ…」

そう言って斎藤は微笑んだが、俺には泣くのを必死で堪えてるようにしか見えなかった。




end






[TOPへ]
[カスタマイズ]




©フォレストページ