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Re:短編小説
ニワトリ
[ID:niwatori0519]
『我が親愛なる友人』
我が友人ジョンは、他人に寛容な人間だ。
何をするにも自分より他人を優先し、その行為に親しさでの優劣はない。馬鹿なお人好しと嘲る相手に対してさえ、彼は笑顔で平等に接した。ジョンは傷つけられても傷つけられたとは思わない、そういう優しくて甘い砂糖菓子のような男だった。
そんな彼を私は常々不思議に思い、こんな質問をした事がある。他人の悪意が怖くないのかいと。
その時ジョンは、砂糖をたっぷり入れたホットミルクを幸せそうに啜っていたのだが、私からの急な問いかけに怪訝そうに片眉を上げた。
「どういう意味だい?」
「そのままの意味だよ。君は他人に優しいけれど、人が怖くはないのかい?」
首を傾げる私に、ジョンはクスリと笑んで、ミルクを一口飲んだ。微笑むと目尻に出来る皺に、幾ばくかの憂いを込めて彼は呟いた。
「……僕は臆病者なんだよ」
ジョンは悲しげにただ静かに微笑んで、甘い甘いホットミルクを啜った。彼は他人に優しく甘い。そして、多分きっと私よりも他人を怖れている。
私は苦味の増したブラックコーヒーを一気に煽り、小さくほくそ笑んだ。
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