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Re:短編小説
芽緒
[ID:emoemo510]
日が高くなってきたとはいえ、まだ肌寒い。温かさを求めて手を伸ばし、カーテンレールにぶら下げられたロングコートに顔を埋めた。太陽の光を集めた黒い布地はとても暖かい。この中に包まれたらどれほど心地いいのだろう。
ええい、いいだろう。持ち主はまだ帰ってきていない。戻ってくる前にまた吊るしておけば許してくれるはずだ。きっと。背延びをしてハンガーからそれを引っ張り下ろすとそれは頭の上にどさりと落ちてきた。
もう来年まで出番はないだろう分厚い生地はずしりと重たい。一応来てみると、裾が完全に床についていた。汚れてしまっただろうかと慌てて裾を持ち上げてみた。よかった、汚れていない。そのまま裾を引きずらないように気をつけながらソファの上に移動して、頭からすっぽりとそれをかぶった。
太陽のにおいをいっぱい吸い込んで、それでも消えない苦そうなにおい。タバコは嫌いだけど、このにおいは何だか落ちつく。不思議な感覚だ。温かさに包まれたままうとうとと目を閉じた。まどろみに引き込まれる瞬間、彼の小さく笑う声が聞こえたような気がした。
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タイトル思いつきませんでした。
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