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森のフォーラム

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Re:短編小説
りお
[ID:bell4724]

久々に。



「明日がくることを恐ろしいと思えるくらい、今日を生きたいわ」
彼女はいつだって不思議なことばかり言う。性格は悪くないのに頭だけは残念だとよく言われる僕は、毎度のことながら首を傾げることしかできない。窓の外に何があるというのだろう。彼女が見ているものを僕が見ることは叶わない。この人は、頭の良し悪しとは関係のない次元で世界を見ているから。
「どういうこと?」
純粋に疑問をぶつければ、ようやくこちらを向いてくれた。この間分けてくれた肉まんのような微笑みは、僕をどこまでもどこまでも優しい気持ちにする。心、とでも言うのだろうか。この胸の辺りが温かくなる瞬間が、僕はひどく好きだ。
彼女は赤ん坊に触れるように僕の頭を撫でる。壊さないよう、大事に大事に。こういう人のことを、天使みたいだと言うのかもしれない。彼女は美しい。僕の世界で、一番美しい。
「私はねぇ、一昨日よりも昨日のが好きなの。昨日よりも今日が好きなの。過ぎ去ってしまった時間は、後から思うととても楽しかった気がするものだから」
「うん」
「だから、明日が怖いわ。楽しい日々が積み重ねられた今という時間は最高に素敵なのに、過ぎてしまえばそれより上が出て来る。それが明日であり明後日であり明々後日なの」
「うん」
「果てなく続く螺旋階段よ、なんて素晴らしく恐ろしいのかしら。生きている限り最上なんてものは有り得ないんだわ!」
「うん」
「だからね、今日という日は素敵な日でなくてはならないの。明日が来ることを恐ろしいと思えるほどに楽しくなければ、私は死の瞬間に最高の気分を味わえないのだから」
「うん」
繰り返し相槌を打てば、満足げにまた窓の外へ意識を飛ばす。彼女は不思議な人だ。僕には今の発言の意味はよく理解できない。けれど彼女は、今幸福なのだと言う。ならば彼女のことを好きな僕としては何の文句だってありはしない。
彼女はこちらを見ない。僕はごろごろと喉を鳴らして小さく丸になった。今日もゆったりと一日が終わる。何の変化も起きないこの部屋。願わくは彼女の明日が楽しいものでありますようにと、僕はにゃあと一つだけ鳴いた。



END.
分かりづらいにも程がありますね。

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