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森のフォーラム

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Re:短編小説
りお
[ID:bell4724]

夢を見たよ。
笑って言うと、彼女は俯きながらも、そう、と返してくれた。
皮を剥がれた林檎が、寂しそうに揺らぐ。赤から白への変身はどうも切なくて、僕は昔から皮のままでかじることが好きだった。赤い方が美味しそうだし温かいじゃないかと話したとき苦笑したのは、彼女だったかしら。
しゃりしゃりと柔らかな音に紛れて質問される。それで、どんな夢を見たの。
どんな夢だったんだろう。ふと僕は首を傾げる。ぽっかりと穴が空いたように眠っている間の記憶が消えていて、夢の内容を忘れてしまっていることに今更ながら気が付いた。
忘れちゃったよ。やはり笑いながら言えば、きょとんとした表情が僕に向けられた。綺麗な目だなと思う。白目が澄んでいる、彼女は純粋な人だものな。口には出さずに手を伸ばすと、フォークの刺さったウサギを手渡された。しゃり。美味しい。うん、この耳の部分が素敵だ。
良い夢だったんだ。何口か食べてから声を出せば、彼女は少し真剣な顔をして頷く。真面目な人だ、本当に。
幸せな夢だった。それだけは覚えている。何があったのか、どうしてかは分からずとも、そのとき僕は幸せだった。目を閉じればそこに夢の続きがあるようで今もとても心地がいい。夢の僕は、堪らなく幸福みたいだ。
一瞬の沈黙があって、震えた声が耳を打つ。天使が通ったね。彼女は泣いているらしかった。
視線を落とすと、耳をなくしたウサギが僕の方を見て痛いと鳴いている。フォークはいつまでも抜けない。僕は何だかとても悲しくなって静かに目を閉じた。
残念ながら夢の世界は、休業日だったけれど。


………………
すごく楽しく書きました。
林檎のウサギの耳はやけにおいしい気がします。

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