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森のフォーラム

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太陽と学者と多色の唇と少女と……。
美南
[ID:megalomania0]
 赤、青、黄、緑、橙。いろんな色が様々な形でフラッシュする。不安定にふらふらと暗闇の中で揺れながら、まるで古いフィルムを再生する様に。黒い線や埃を映し出したかのようなノイズを混ぜて、ふらふら揺れながら、紫、茶、肌、桃、水。いろんな色で踊る。
 やがてそれが唇の形を描いていると気づいたのは、それの隣にいる少女の唇が、あれと同じように動いているのを見たから。様々な色で唇は何かを囁いている。スクラッチ音が喧しく響いて、ピアノの音が走る。スティルが華麗な音で響くかと思えば、スネアやハイハットが果敢に叫ぶ。
 何十と走る狼の群れを風が追いかけ、木の葉が緑から茶色に変わる。水彩絵の具を水に溶いて、白紙に零したような色使いで雨が降る。一直線に空を菱型の鉄片が飛ぶ。星の無い空で何かが瞬いた。両の天秤に乗った分銅と木の実が揺れて、一人ぼっちの鉛筆が野に鳥の図形を描く。
 少女は笑う。一糸纏わぬその姿を、ベルベットのように上品な長い髪だけが、彼女の体を守っていた。鎖骨を、胸を、腰を、脚を隠した長い髪は、足元に流れる綺麗な小川の水分を吸い上げ、少女の体を潤いで満たしていた。
 赤、青、黄、緑、橙、紫、茶、肌、桃、水、黒、白。次々に色と形を変える唇が、何かを囁くが、何も聞き取れない。その内世界は燃え上がり、唇は叫びの形しか映し出さなくなる。黒から白。白から黒。二色しか彩らなくなった唇が燃え上がり、狼は熱風を抱き旅立つ。水彩の世界が燃え上がり、少女の体は真っ黒に焦がしてしまった。所々くすぶった炎の赤が、少女の炭の肌をじわりと走っている。
 やがて生まれた太陽には一人の学者が座っており、本を片手に丸底フラスコの中身を太陽に零している。フラスコからは金色の砂が輝きながら零れ、太陽の表面で踊り沈んでいった。金色の砂は尽きることなく、いつまでも学者のフラスコから零れているので、学者は一向にフラスコを手から離すことはできず、ページをめくることも出来ないでいる。
 炭となった少女の身体。美しかったベルベットの髪は既に跡形も無くなっている。熱風と駆けた狼も既に灰となり、風に吹かれ飛んでいく。その吹かれた灰ですら、巨大な狼の形をかたどり、地を駆けた。灰の狼は少女の体をなで上げ、形を崩し霧散した。
 残った少女の体を、太陽に座った学者が、じっと見つめている。金の砂を太陽に零しながら、いつまでも、その体を見ていた。

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