特別に、

□苺よりお前の方が、
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「―未来。これ、食べないか?俺が作ったのだが」

『おお、食べますとも!』

「こっちに来い。」


太る、なんて事を考えずに誘われてしまった私はキッチンに向かう。
シェゾのエプロン姿って何か、新鮮だなあ。



「そこに置いてある。」

シェゾの目線の先には、苺がちょこんと乗った可愛らしいショートケーキがあった。


『美味しそうだね。シェゾが作ったの?』

「ああ。久しぶりに作ったから腕が鈍っていると思ったが、中々上手く作れた。」

『あー、悔しいぐらい可愛いんですけどこのケーキ。』


するとシェゾは、私の何気ない言葉に眉を寄せた。




「俺には、未来の方が可愛く思えるのだが。」




『―っ!?』


「……なんだ、照れたのか?」

ふ、と笑ったシェゾの口にショートケーキの苺をつっこむ。


『ぜ、ぜんっぜん照れてないからっ!!!シェゾは苺でも食べて黙ってろ!』

むぐ……、と口に含んだ苺を飲み込んだシェゾ。


「俺は、苺より未来の方が食べたいのだがな。」


少し、時が止まった気がした。
今日のシェゾの変態発言は、ずば抜けて危ない。



『……じょ、じょじょ、じょーだんはよくないなあシェ―』


私が言い終わろうとしたとき。
シェゾの腕が私を引き寄せた。
お互いの熱、速まる鼓動、甘い香りが伝わってくる。

『ちょ、しぇぞ……っ』


自分でもわかるぐらい熱くなった顔。
自分はシェゾに抱き締められ、距離が0なんだ、という事を悟ってしまった。
シェゾの匂いが、鼻を擽る。



「口を開けろ」

『ん……』


少し口を開けると、唇に温かい感触を感じて、それから甘い香りに少しの酸味を感じた。




「俺からのプレゼント、だ。」


『っ!!』


シェゾの口移しで貰った苺は、とても酸味が強くてとても、甘かった。







よりお前の方が、

(シェゾのっ……変態!!)

(なっ、俺は断じて変態ではない!)

(説得力なさすぎ!!しかも苺……酸っぱいし。)

(ならばもうひとつ、いるか?)

(い、いらないってばっ!!)



 

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