短編
□独占欲
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「かなちん〜」
『どうしたの?むっくん』
目の前にいる彼女は、大切で可愛くて食べてしまいたいくらい可愛い俺の恋人。
女子にしては長身な彼女に後ろから抱き締めた。
「かなちん〜」
『なぁ〜に〜?』
ただ名前を呼ぶだけの俺に、飽きたり怒ったりしない穏やかな彼女。
「ちょっとねぇ、呼んでみただけ〜」
『変なむっくん』
「変じゃないもん」
拗ねたように言えば、フフッと柔らかく笑う。
そんな笑顔が大好きで、この笑顔が守れるならお菓子なんて要らない。って思うほどかなちんが大好き。
だから、彼女が俺以外の奴に楽しさそうに話をしていたり、笑ってたりすると相手を捻り潰したくなる。
めちゃくちゃイライラする。
俺だけしか見えないくらいに夢中にさせたい。それが無理なら監禁して、一日中俺のことしか考えられないようにしたい。
でも、そんなことしたら
きっと、彼女の本当のあの笑顔が見れなくなる。
それは絶対にイヤだから……。
無意識に腕の力を強める。
『どうしたの?何か、あったの?』
「……かなちん、あのね…
俺以外の奴と話さないで、笑わないで、ずっと俺のそばにいて」
彼女の肩に顔を埋めて、小さな弱々しい声で言った。
無意識でこんな普段の俺じゃ出せないような声が出るなんて思ってもいなかった。
少し黙っていたかなちんが『むっくん』と俺の名前を呼び、身体を回転させて向き合うようにした。
彼女は長い俺の髪を優しく退けながら頬に手を当て、微笑む。
『安心して、むっくん。私は、むっくんが大好きだよ。むっくんと一緒に居る時間が大好き、話すのもお菓子を食べる姿もバスケをしている姿も子供っぽいところも私をこんなにも想ってくれてるところも全部大好き』
「ありがと…」
じわーっとかなちんの言葉が心に滲む。
『むっくん』
「なぁに?」
『そういう感情を何て言うと思う?』
「ん〜、わかんない」
『フフッ、それはね……』
独占欲
(室ちん!室ちん!)
(どうしたんだい?敦)
(俺ね、絶対かなちんと結婚する!!)
(そうなんだ。
じゃあ頑張らないとね(色々と))
(うん!!)
end