花は嫌いだ。
 

美しいのは一瞬だけで


その一瞬さえもただただ儚くて


『永遠』という概念から、随分とかけ離れてしまっている。


だから、花は嫌いだ。


「でも、だからと言って」


「なぁに、ビッチちゃん?」


「絶対だとか永遠だとか、心にもないことを口に出す貴方も嫌いよ」


「ははっ。心にもないなんて酷いなぁ。これでも僕は誠心誠意、君と接しているつもりだよ?」


そう言いながら、にやにやと笑みを浮かべて花弁をちぎるライト。


その瞳を見据えながら私は小さく溜息をついた。


「ホント、掴めない男」


「ふふっ。どうもありがとう。


でも、そもそもビッチちゃんにはさ」


「何?」


「僕がずっと傍にいるとか、そういうの必要ないんじゃないの?」


ちぎった花弁を再びかき集めながら彼はそう言った。


「だって君は、ただのか弱い女の子かもしれないけどさ」


赤、黄、白、青、紫。


元は異なる1つの集合体を作っていた花弁たちを、もう一度集めて新たな花をつくる。


そうして出来た鮮やかな花を、ライトは私の髪にそっと添えた。


「君を求めてくる奴なんて、僕以外にもたくさんいるじゃない」


「それは…」


「君を、というよりも君の血を、だけどね」


「・・・」


血を求められることがあったとしても、それは所詮『餌』でしかなく『私』が求められているわけではない。


それでも時々錯覚してしまう。


自分が必要とされているんじゃないかって。


愛されてるんじゃないかって。


「ほら、そんな深刻な顔しないでよ?


君がどんなに酷い目に合って帰ってきたとしても、僕はちゃんと君のことを愛してあげられるんだから」


花弁がそっと取り払われ−


「それこそ永遠に、ね」


−ライトの手の中で握り潰された。


「ほら、その花凄く似合ってるよ」


器用にもダリアの花を私の髪に飾ってみると


彼は満足げに目を細めた。


ありがとうございました



[TOPへ]
[カスタマイズ]

©フォレストページ