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□seasons
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「美味しい?」


「うん、とっても美味しいよ」


今日は2月14日。


私が差し出したチョコレートをむしゃむしゃと頬張るカナトくんを見て、思わず笑みがこぼれた。


「あ、そうだ。紅茶も入れたんだけど飲む?」


「名無しが入れてくれたものなら何だって飲むよ」


その言葉を聞き嬉しくなった私は、すぐに用意するね、と言って席を立った。







広いキッチンには今は誰もいない。


昔は使用人として人間を雇っていたけれど、全て処分してしまった。


そのせいで甘い物をつくってくれる人がいなくなってしまったのだが、今考えるとそれで良かったのだと思える。


だって私以外の人がつくったものがカナトくんの口に入るなんて嫌だから。


本当はカナトくんが私以外の人の血を飲むのだって嫌なんだけど・・・


カチャカチャという音を立てながら私は綺麗に装飾の施されたカップを取りだした。


あらかじめ用意しておいたお茶をカップに注ぎ入れる。


あとお砂糖とシロップも。


カナトくんは甘いのが好きだから、とびきり甘い物を用意して行かなければ・・・


小さなティースプーンでかき混ぜながら、私は思い出したように自分の指の腹に傷をつけた。


一滴、二滴。


紅い雫がカップの中へと吸い込まれていく。


これで喜んでくれるかな。







「おまたせ」


私が居間に戻るとチョコレートはまだ残っていた。


良かった、たくさん作っておいて。


「良い香りだね。ちゃんと君の血も入れてくれた?」


「うん。カナトくんのお願いだもの。聞かない訳ないじゃない」


そう言うと彼は、満足そうに立ち昇る甘い香りを一杯に吸い込んだ。


紅茶もチョコレートも全部全部。


彼が望むのなら私の血なんていくらでも注いであげる。


私の血が彼の体内を巡るなんて、考えただけで素敵じゃない。


2人だけのこの空間で、私にとって彼は絶対であり彼にとっても私は絶対的な存在だった。


遠い昔、ここにはまだ多くの人がいたような気もするんだけど・・・


私にとってはもう、どうでもいいことだ。


「ねぇ、名無し」


「なに?」


「僕のためにこんなに用意してくれるなんて、君は本当に可愛いですね」


「だって、カナトくんが喜んでくれると思ったから」


彼が喜んでくれるなら私は―







君の血となり肉となり
END後の共依存の関係
むしろあそこからスタートしたい

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