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□seasons
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困った。


私は部屋へ向かいながら考えていた。


これは一体どうしたものかと。


両手に持った2つの袋を見比べながら、私は困り果てていた。


「おい」


余りに考え込んでたものだから、後ろから自分のことを呼んでいる声がしているなどとは全く気が付かなくて。


「おい!聞いてんのかよ!」


いきなり背後から怒鳴られて驚かないわけがない。


思いっきりビクつきながら恐る恐る振り返ると、それはもうご立腹の様子でスバルくんがこちらを睨んでいた。


「スバルくん!?どうしたの?」


咄嗟に両手を後ろに隠す。


その様子を不審がられたのか、私が今一番触れて欲しくない話題に触れてきた。


「お前・・・その隠してるの何だよ?」


隠しているということは、隠すべき理由があるからそうするのであって。


少しくらい空気を呼んでくれてもいいのに、なんて思いながらもお茶を濁す。


「え?こ、これ?これは友達から渡されたもので・・・」


「は?それなら別に隠す必要はねぇじゃねぇの?」


白状しろと言わんばかりに、じりじりと壁際に追い込まれる。


もちろんこの体格差は覆しようがなく、ただ後退することしかできない。


「ちょっ、スバルくん!近いって!」


カツン。


私の必死な足掻きも、靴のかかとが壁にぶつかる音がして終わりを告げた。


「もう逃げらんねぇぞ」


「分かった!分かったから!」


とうとう観念した私は、後ろに隠していた紙袋を差し出した。


「はい」


「あ?何だよ、これ」


紙袋の中には、可愛らしくラッピングされた箱が入っている。


それを見た彼は何も気付かないようで、首をかしげるだけ。


おそらく、今日が何の日かも分かってないのだろう。


私はそんな様子を見かねて、仕方なく弁解を始めた。


「ほら、今日ってバレンタインじゃない?それで、同じクラスの子にスバルくんに渡して欲しいって頼まれて・・・」


2つの紙袋のうち、1つはそれだった。


そしてもう1つは―


「確かにこっちは知らない奴の匂いだが」


「えっと、もう1つのは私が・・・」


貴方のために用意しました、なんてはっきりとは言えなくて。


思わずボソボソと呟き、ごまかしてしまう。


お互い何も言いだせず、気まずい空気が漂う。


こんなはずじゃなかったのに。


もっと気楽に渡すつもりでいたのに、何だかもう色々と恥ずかしい。


「・・・よこせよ」


「え?」


「ちっ。よこせって言ってんのが聞こえねぇのか?」


私の手から袋をもぎ取ると、足早に自分の部屋へと行ってしまった。


「あ・・・」


私の左手には、頼まれた方の紙袋がぶら下がっている。


「どうしよう、これ」


途方に暮れながらも、空いた右手を見て思わず顔が赤くなってしまった。


その後『美味かった』なんて言葉を聞いた私が、まともに顔を見れなかったのは言うまでもない。







Happy Valentine
青春してますね
スバルは普通に女の子から貰ってそう

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