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□seasons
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「ライト、あーんして」


「ふふっ。君が食べさせてくれるの?」


手にした缶の中から一つチョコレートを取りだすと、ライトの口元へとそれを差し出した。


その距離わずか50センチという、非常に近接した関係。


ライトの膝に乗って向かい合っているのだから、自然とそうなってしまうのだけれど。


「あーん」


私の指がチョコレートと一緒にライトの口の中へと吸い込まれていった。


甘く噛まれれば何だか変な気持ちになってしまう。


「美味しい?」


私がそう聞くと、ようやく指を離してくれた。


離した指に僅かに付いたチョコレートの欠片を舐めとり、彼は口を開いた。


「凄く美味しいよ。チョコレートも、勿論名無しちゃんも」


「そう。良かった」


その後も、丹念に右手を舐めつくされる。


私としてはチョコレートも食べてもらいたいんだけど・・・


愛おしそうにその行為を続けるライトを目にすると、なかなか言い出せない。


「ライト、チョコいらないの?」


折角ライトのために買って来たのに。


少し口を尖らせると、今度は空いていた左手までも拘束された。


「僕はね、チョコなんかよりも君を味わいたいんだよ」


そう言って体を傾けるライト。


両手が繋がれたままの私にはバランスを取ることは到底難しく、そのままライトの胸の中へと倒れこんだ。


「ほら、こっち向いて?」


言われたとおりにライトの方を向くと、緑色の瞳とぶつかった。


綺麗な曲線を描いているその瞳は、また私を惑わせる。


「あ、あの」


「何?止めてって言っても、勿論止めてあげないよ?」


私の言葉を遮って、ちゅっという音を立ててキスを落とすライト。


私が乗っかっちゃって重くないのかなだとか


折角買ってきたチョコレートがベットから落ちて飛び散ってしまっただとか


色々思う所はあったんだけど


私のことを大事そうに抱えてキスを落としてくれるライトを見ると何も言えなくなってしまった。


「君は何も考えなくていいの。ただ、僕に可愛がられてさえいれば、ね?」


まるで見透かされたようにそんなことを囁いてくるライトに対し、私はゆっくりと頷いた。







失楽園へあと一歩
チョコレートは後でおいしく頂きました
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