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□seasons
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「シュウ、おめでとう」


そう言って私が大きな花束を差し出すと、もの凄く怪訝そうな顔をされた。


私が料理を失敗して、真っ黒な炭みたいなものを生み出してしまったときの様に。


予想していた表情とはちょっと、いやかなり違っている。


「もしかして今日が何の日か忘れてる?自分の誕生日でしょ」


「ああ。何だ、そんなこと覚えていたのか」


「そんな事って何よ。そんな事って」


確かにサプライズ的なものを考えていたけれども、ここまで本格的に期待されていないと悲しいものがあるというか。


まぁいいや。だって今日はこの人の誕生日なんだし。


「とにかく、おめでとう」


仕切り直しと思ってもう一度、花束を差し出すと


面倒臭そうではあるが、今度はちゃんと受け取ってくれた。


「なぁ、あれはないのか?」


「何?あ、ケーキのこと?ケーキなら」


「そうじゃない」


その瞬間、少しだけ体が浮いた。


コンマ数秒後、私はしっかりその人の腕の中にいて。


もう何度もこなしている工程なのに、何度でもときめいてしまうのはずるいと思う。


ふとした瞬間に感じるこの大きな体が、私は堪らなく好きだから。


そして、そんな私にはお構いなしにいつもの調子で淡々と言葉を紡いでいく。


「誕生日ってことは、あれだろ?名無しが何でも俺の言う事を聞いてくれるってことだろ?」


耳元でわざとらしくそういうのは絶対にからかっているからであって。


そして多分、彼が期待したとおりに顔を真っ赤にした私がいるのであって。


本当に勝てないなって思う。


「返事は?」


「・・・」


ちょっとした反抗心。


だって嫌だって言ってもきっとそうなるだろうし、今までだってこの人のお願いを退けたことなんてないんだし。


そう思って黙っていたのだけれども、沈黙に耐えられなくなって結局は私から降参することになってしまった。


「・・・分かった。じゃあ、今日はシュウのお願い何でも聞いてあげる」


何をすればいいの?


そう問うようにシュウの方を見ると、どうしてだか黙って私の方をじっと見つめていた。


もしかして何か企んでいるんじゃなかろうか。


「シュウ?」


「・・・」


「ねぇ、何か変なこと企んでるの?」


思わず頬を突いてみようとしたのだけれど、すんでの所で止められてしまった。


残念だ。


「もし俺が」


「ん?」


「ずっと傍にいろと言えばあんたはそうするのか?」


その言葉を聞き、私は溜め息をひとつこぼして答えた。


「そんなの今更じゃない?私はこれまでもこれからも、ずっとシュウの傍にいるんだから」


貴方がそれを望むのなら、貴方が許してくれるなら、私はいつまでも傍で笑っているよ。


生まれてきてくれてありがとう。







Happy Birthday
10/18 シュウの場合
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