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□過去拍手
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信じないようにしたのは裏切られるのが怖かったから。


ううん、裏切られるのがじゃなくて傷つくのが怖かった。


傷つきたくなかった。


だから好きだなんて言って欲しくなかった。


「ビッチちゃん、今日も可愛いねぇ。ふふっ、愛してるよ」


どうせまた、そうやってからかってるんでしょ。


私のこと、餌としか見てないくせに。


そんな『愛してる』なんていらない。


私にはそんなものいらない。


「ファーストキス、貰っちゃった。ビッチちゃんも嬉しいでしょ?」


嬉しくなんかない。


あなたなんて、あなたが初めてなんて―


きっとまた私で遊んでるんだ、きっとそうなんだ。


「ねぇ、僕のこと好き?僕は君のこと好きだよ。もう何処にも逃がしたくない位」


好きじゃない。


私は貴方なんて好きじゃない!


あっちに行って、放っておいて!


もう私に―


―優しくしないで。







「・・・ライト?」


目の前に横たわっている人影を確かめながら私は問いかけた。


それは動かない。


「ライト?起きてるんでしょ?」


そう言いながらも私は知っている。


それがもう二度と動き出すことのないことを。


そして私の頬が濡れている訳を。


「あれ?私、どうして泣いて・・・」


ああ、そうだ。


本当は私は嬉しかったんだ。


だってこんな理不尽な生活を強いられる中、彼だけは優しくしてくれたから。


それが見せかけでも何でも良かったんだ、それでも私は彼が好きだったんだから。


「どうしてこうなったんだろう・・・」


そっと亡骸を引き寄せると、思ったよりも軽く感じた。


本当に、いなくなってしまったんだな。


愛情から逃げ続けていた彼女は、そっと独り涙を零した。
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