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□過去拍手
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年末の大掃除。
正直面倒でなるべく避けたいイベントだ。
しかし残念なことに逆巻家の良心ともいえるレイジさんは随分乗り気なようで、私は3兄弟と一緒に2階の掃除を命じられてしまった。
当然逆らえることもなく雑巾や掃除機を抱えて部屋を行ったり来たりしているのだが・・・
薄々分かってはいたが、このメンバーではまともに掃除を行うことは難しいだろう。
案の定アヤトは私が丁寧に拭いた床を水浸しにするし、カナトは『僕にそんなことさせるの?』と言いだす始末だ。
もちろん恐ろしいから頼める筈もない。
唯一手伝ってくれるのはライトか。
3兄弟の中では、一応話を聞いてくれるし。
「ライトって案外大人だよね・・・変態だけど」
泣きやまないカナトを上手くなだめて、窓を拭いているライトを見て少し感心してしまった。
「ビッチちゃんどうしたのー?もしかして、僕に惚れちゃった?」
「いや、それだけは絶対にない」
きっぱりと否定して私はカーテンの上の埃を取った。
全く、こういうところが残念で仕方ない。
「どうしてこう、クセがあるっていうか」
「何言ってるの?ビッチちゃん」
耳元でふっと息を吹きかけられれば当然動揺する私。
「ちょっと!何を」
あ。
そういえば今、脚立の上に乗ってたの忘れてた。
そう思った時にはすでに遅くて、私は背中から下へと落ちて行くのを感じた。
あーあ、やっちゃった。
次の瞬間訪れるであろう痛みを覚悟し、思いっきり目を瞑った。
・・・が、いつまでたっても痛みはやって来ない。
「君はいっつもそそっかしいんだから」
気付いたら目の前にライトの顔があって
こんなにもベタな展開で助けられて『ありがとう』とか言いつつも
心臓がバクバクしてまともにライトの顔を見られなかったのは絶対に言えない。