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□過去拍手
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スケジュール帳を開いて赤く印が付けられた日にちを確かめる。


『25日』


それは多分、この屋敷に住む人たちにとってはどうでもいいのかもしれないんだけど。


それでも一応、私はまだ人間だから。


当然クリスマスという、世間一般では華やかな行事にも私はまだ参加したいわけで。


「行ってきまーす」


誰にも見つからないように、こっそりと玄関の扉を閉める。


今は昼間だし、きっと皆寝てるから大丈夫だろう。


1人で出かけるのは久しぶりだし、少し遅くなっても・・・


「何してんの?」


・・・大丈夫じゃなかった。


後ろから気配を消すように近づいてきたのは、相変わらずだるそうにしているこの屋敷の長男。


他の兄弟達に比べれば、まぁ面倒なことにはならないと思うのだが。


「えーと、その」


どうして普段は寝ている筈なのにこんな時に限って起きてるわけ?


嫌がらせ?


それともただの偶然?何それ、天然なわけ?


「勝手に出て行くな。行くぞ」


「ちょっと引っ張らないでよ!」


残念ながら私の目論見は失敗したようだ。


結局そのまま私はずるずると引きずられて、屋敷の中へと戻されてしまった。


「ねぇ」


「・・・」


「シュウ!聞こえてるでしょ」


何をすることもなく、ただ寝てるだけ。


正直、私ここにいなくてもいいんじゃない?


深い溜息をついて立ち上がると私はドアノブに手をかけた。


「おい」


はぁ。


「何?」


いい加減にしろってそう言おうとした筈なのに、ぐらりと揺れたその視界の先にはどこか物欲しそうな顔をしたシュウがいて。


腰に手をまわされて再びベットに放り投げられれば、唇を奪われていた。


咄嗟の出来事に顔が赤くなる。


そうやって私を丸めこもうとしているのが気に食わなくて、意地の悪い質問をしてやった。


「今日が何の日か知ってる?」


どうせ知らないんでしょう?


あるいは知ってても『どうでもいい』とか言うんだろうな。


そう思っていたのに。


「クリスマス、だろ」


「え?」


まさかシュウの口からそんなことを聞くなんて。


「ほら、プレゼント」


そう言ってもう一度、キスが降ってきたのは私を困らせるためだったのだろうか。
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