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□過去拍手
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「ヴァンパイアの寿命って長いじゃない?」


「ん?」


ふと疑問に思ったことを口にすると、隣で寝っ転がっていたシュウは面倒臭そうにこちらを見た。


言いたいことは分かる。


どうせ『また始まった』とか思ってるんでしょ。


「人の寿命って、テロメアっていう染色体で決まってるって知ってる?」


「テロメア?」


面倒だと思われようが、そんなのは構いっこない。


第一、何をしてもだるそうなこの男の興味を引く物なんてあるのかしら。


そうして私は、自分の思い付いたことをまくしたてるように話した。


「そう。人生は引き算なわけ。テロメアっていうのは寿命が減っていくのと同じように短くなって行くから。


それならヴァンパイアは人間よりもの凄く長いテロメアを持つのかしら。


それともテロメアを伸長させる酵素があるとか」


「その話、まだ続ける気?」


どうやらこのお話はお気に召さなかったようだ。


それでも語りたい私は、誰か話の通じそうな人がいないかと思い巡らせた。


「あ」


「今度は何?」


「レイジさん」


「レイジ?」


そうだ。


この屋敷にいる唯一の常識人、レイジさんがいるではないか。


「ちょっと今の話、レイジさんに語って」


「駄目だ」


あら。


珍しく部屋から出て行くのを引き留めてくる。


「あんたはここにいろ」


そう言って腕を引かれてベットの上に戻されれば、少し拗ねている様子のシュウ。


「話なら俺が聞いてやる。だからレイジの所には行くなよ。絶対にな」


「はいはい」


長男なのに子供っぽい。


それを指摘すると、多分また機嫌が悪くなるから言わないけど。


でもそんな彼を見ていると、私の持論とかはどうでもよくなってしまって。


要は2人で長い時を過ごせるってことでしょ?


「もうどこにも行かないから」


そう言って、少しだけ空いていたその距離を詰めるように寄り添った。
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