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□過去拍手
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「貴方って本当に太陽に嫌われてるのね」
夏が終わったからこそ言えるそんな冗談は、どうやら彼の気に障ったようだった。
赤みを帯びた肌を恨めしそうに眺めながら思いっきり体重をかけられる。
「ちょっと!重いんだけど」
「ああ、そう」
確かにヴァンパイアに夏の日差しは似合わないけれども。
それでも、ちょっと太陽の下にいたからってすぐに日に焼けてしまったシュウには驚いた。
もともと肌が弱いのかもしれない。
そして秋の日差しにも注意するべきだといういい教訓にもなっただろう。
「シュウは、今まで夏をどんな風に過ごしていたの?」
背中に力を込めて反対側に力をかけながら聞いてみた。
力では勝てる筈がないのを分かっているのに、そうやって囁かな反抗を止めないのを我ながら子供っぽいなって感じながら。
「・・・重い」
「あ、ごめん」
いつの間にか反るような格好になっていた私はもう一度座りなおして聞いてみる。
「夏はやっぱり、なるべく外に出ないようにしてたの?」
私が座りなおすとまた、先程とは異なった場所に負荷がかかる。
その一連の流れがあたかも当たり前であるかのように、私の膝の上に頭を乗せるシュウ。
この重さは嫌いじゃない。
と言ってもさっきの重さも嫌いではないんだけど。
「・・・そうだな。ほとんど家で寝てるな」
「それって今と変わらないじゃない」
世の子供たちが海だ山だと騒いでいる時に、一人部屋で寝ることを選ぶ幼いシュウを想像してみた。
彼らしいと言えばそうだけど、そんな子供は嫌だ。
「ふふっ」
「何笑ってんの?」
そう言って右の頬をつねられた。
もしかして何を考えてたのか勘付かれたのだろうか。
「何でもないよ」
「ふーん。別にいいけど」
それだけ言うと、大きな欠伸を一つして目を閉じた。
「おやすみ」
「・・・ん」
無防備な寝顔。
そうやってまたいつものように過ごす私たちには、結局のところ夏だからとか関係ないのだけれども
私の膝の上で心地よさそうにうたた寝をしている彼を見ると
こんな非生産的な日常も悪くないと思ってしまっている。