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□過去拍手
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「愛には6種類あるのって、知ってる?」


彼の背中を指でなぞりながら私はそう問いかけた。


私より幾分大きなその背中は一言で言うならば―美しい。


傷一つない白い肌は私よりもちょっとだけ体温が低く、冷たい。


「6種類?」


「そう。ルダス、エロス、プラグマ、マニア、ストーゲ、そしてアガペ」


「ふうん」


いつもの様につまらなそうに相槌を打つシュウ。


そしていつものように、そんな彼にはお構いなしに言葉を紡ぎ続ける私。


「ルダスは言ってしまえばライトみたいなタイプね。楽しければいいってやつ」


「それはお前も同じじゃないのか?」


珍しく私の言葉に返してきたと思ったらそんな事。


彼は本当に私を煽るのが上手い。


「そう思う?」


「違うのか?」


「私が誰にでも尻尾を振るような駄犬だって言いたいの?」


冗談じゃない。


あんな軽い男と一緒にしないでほしい。


「プラグマは実利主義。ストーゲはいわゆる友人から恋人にっていうアレね」


血を求める彼らはきっと、どこかプラグマ的な所があると思う。


―そういうのって、実は好きじゃないんだけど。


まぁでも、好き嫌いを言っている場合でもないか。


「エロスは言わば面食い、マニアは狂信的。そしてアガペは気高い自己犠牲」


さて私はどれに当てはまるでしょうか?


ちょうど骨の出っ張りまで指をスーッと降ろしてそこで止める。


まるで『早く答えなさい』とでも言わんばかりに。


「分からない?」


「・・・はぁ」


私に聴かせるように大きく溜息を吐いた彼は、突然体を反転させた。


「ちょっと」


体勢を崩した私は、そのまま彼の胸へと飛び込む形になる。


「狂信的な愛。お前にぴったりだ」


ご名答。


そう言って私が笑うと、手足に繋がれた鎖がジャラジャラと音を立てた。
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