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□過去拍手
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「君、本当にシュウなの?」


目の前に座る少年にそう問いかけると、少し躊躇いながらも頷いてくれた。


幼いながらも整った顔立ちと、どこか上品な様子が伝わってくる。


例えるなら、いい所の坊っちゃんみたいな。


「もしかして、私のこと覚えてない・・・とか?」


先程から私の部屋の中をキョロキョロ見回したり、こちらをじっと見てきたりしている。


もしやと思い聞いてみれば、あなたは誰?という質問が飛び出してきた。


「か、かわいい・・・」


あの無気力さやふてぶてしさは何処に行ったのか、と問いたくなるほど純真な子どもそのものだ。


言葉づかいは丁寧だし、その瞳も心なしかキラキラしてる気がする。


「シュウ・・・くん?」


「何?」


かわいいよ!そんな風に首をかしげないでくれ!


思わずぎゅっと抱きしめてしまった。


「お姉さん、あの」


「あ、ごめんね。シュウくんがかわいすぎてつい・・・」


思わず顔がにやけてくる。


「ううん、平気。お姉さん温かいんだね。僕は冷たいからさ」


それどういう意味?


ずっと抱き締めていてもいいよってこと?


普段のシュウからは想像できないほどの可愛らしさに、私は悶えていた。


何かこのままいくと私、法律に触れそうで怖いんだけど。


「普段のシュウもこれ位可愛ければいいのに」


小さいシュウの頭を撫でながらそう呟いたその時


「何言ってんの、あんた」


あれ?


聞き慣れた低音が私の耳元で囁かれ、気が付くと目の前に居た筈の天使は消えていた。


「あれ?シュウは・・・?」


「俺ならここにいるけど」


辺りを見渡すと、そこは自分の部屋のベットの上。


「俺を放っておいて何1人で寝てんの」


「私、寝てた?」


ということはつまり・・・


「夢オチ!?せっかくあんなに可愛らしいシュウを愛でていられると思ったのに!」


「何言ってんの?」


「え?」


私の口から出た言葉が気に入らなかったのか、覆いかぶさってきたシュウ。


「ねぇ、重い」


「うるさい。誰が可愛らしいって?」


「いや、違っ!それは夢の話で」


「まぁ、いいや。どうせ退屈していた所だったし」


首筋に顔をうずめられる。


髪が当たってくすぐったい。


「なぁ、もう寝ようなんて思わないよな?」


可愛い所、あるじゃない。


ちょっと拗ねたようにそう言ってくるシュウに、少し笑ってしまった。
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