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□逆巻家
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おそらく私たちは似た者同士なのだろう。


意地っ張りで頑固で、自分の本当の気持ちを決して表に出そうとはしない捻くれ者。


いつまで経っても平行線で埒が明かない。


今日だってそう。


私がここにいても何をするわけではない。


それなのに出て行こうとすると引き留められる。


「どうして?」


わざとそう問いかければ無言のままベットに投げ出された。


その問いかけには答えてくれない。


でも代わりに唇を塞がれる。


何?それが答えってわけ?


やっぱり気に食わない。


「ねぇ、どうして出て行ったら駄目なの?」


わざとらしくもう一度尋ねたら、痛い位に唇に噛みつかれた。


「もう少し優しく扱ってくれてもいいのに」


「あんたに優しさなんて必要ないだろ?」


確かにそうかもね。


優しさなんて甘いものよりも、苦い駆け引きの方が好きみたいだし。


だけど意地悪な私はそんなこと言ってはあげない。


代わりにと言っては何だが、口から出てくるのはやはり相手を揺さぶるような言葉だったりする。


「誰が一番優しくしてくれるかしら?」


そんな気はないのに、ホントは興味なんてないのに、そんなことを言ってみる。


「それ本気で言ってんの?」


「勿論」


勿論、嘘。


きっとシュウだって私がどう考えてるか分かってる。


分かってるけどそれを認めるのは癪だから言わないだけ。


「なぁ」


「何?」


少し間が空いた後、耳元で囁かれた妙に熱っぽい声。


「あんたがもし他の奴の所に行ったら」


どうなるか、分かってんだろ?


紡がれたその言葉は、私を独占欲で一杯にしてくれる。


だって貴方が私で一杯になってるって感じられるから。


でもまだ足りない。


もっと、もっと私のことしか考えられなくなって欲しい。


「貴方に私が殺せるかしら?」


挑発的にそう言ってやると、それまで髪を弄っていた手の動きが止まった。


顔を見ると冷静な青い瞳がギラギラと輝いているのが見れた。


「殺されたいの?」


そう言いながらシュウの手が首元へ伸びてくる。


「殺されそうになったら」


誰の元に逃げようかしら。


そう言いきる前に再び塞がれた唇は、しばらく離してもらえなかった。







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めんどくさい2人の話
何だかんだ言って相互依存

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