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□逆巻家
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「ねぇ、これホントに温かい?」


後ろから回されるその手を受け入れながら私は尋ねた。


「思ったんだけど、遭難して服が濡れちゃったわけでもないんだから着こんだ方が温かいんじゃない?」


これが正論じゃない?


そう言って少し首を傾けて後ろを振り返れば、むっとした様子で返された。


「何?あんた、俺から逃げようってわけ?」


「そうじゃないけど」


そうじゃないけど、そうなのかもしれない。


だって毎日こうしているうちに、いつの間にかシュウから離れられなくなりそうで。


いや、もしかしたらそうなりつつあるのかもしれないけど。


「なぁ、何考えてんの」


「別に・・・ぁんっ」


突然伸びてきた手によって胸の先端を刺激されると、思わず声が出てしまった。


「いやらしい声」


誰のせいだと思ってんの?


そんな反抗的な言葉も溶かしてしまうほど、確実に私の感じる所を攻めてくる。


「ちょっ、シュ、ウ」


「何?聞こえない」


胸の位置にあった手はそのまま下へ降りてきて、一番敏感な所に指を這わせる。


「血、は?」


どうにかその行為を止めようと、私は必死に声を紡ぎ出した。


「は?」


「血、吸わないの?」


すると指の動きが止まり、耳元に温かい吐息を吹きかけられた。


「吸って欲しいのか?」


吸って欲しいんじゃない。


ただこのまま行くと、今日もまた貴方に溺れそうでそれが怖いの。


そんなことは言える筈もなく必死に頷くと、ちゅっというリップ音の後に牙を突き立てられる感触がした。


「いっ」


痛い―そう言おうとした瞬間、下の方に伸びていた指が再び動き出した。


「あっ、や、だめ」


中に指を入れられて関節を折り曲げられれば、さっきよりも大きな声が出てしまった。


「なん、で」


普段ならこんなこと、しないのに。


上からも下からもクチュリといやらしい音がして、それがまた私の理性を狂わしていく。


「たまには甘いのも悪くない」


そう言いながら確実に私の弱い部分を狙って触れてくる。


小刻みに動くその指は私を狂わせるには十分な程で、それに反応してもっと刺激を求めている自分がいた。


「んぁっ・・あっ」


「ほら、早くイっちまえよ」


気が付くと牙は抜かれていて、その代わりに耳の中を蹂躙されていた。


「ここ弱いんだろ?」


甘い声が頭の中に響く。


その言葉と共に私の中で何かが弾けて、目の前が真っ白になった。







その行為はいつだって
なんかもうシュウ様に苛められたい
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