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□逆巻家
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目の前に横たわるのは赤く染まった男の死体。


それを見ても、もはや何も感じなくなったのはいつからだろうか。


いや、そもそも最初から何も感じていなかったのかもしれない。


「何も殺すことないじゃない」


死体を挟んで立っている男にそう言うと、私はしゃがみこんだ。


「せっかく楽しもうと思ったのに」


横たわる死体の顔を見ると、安らかに眠っているままだった。


あーあ、もったいない。


いい餌を見つけたと思ったのに。


少し残念そうに溜息を吐くと、ピリッとした殺気が伝わってきた。


「あんた、俺をおちょくってんの?」


怒ってる怒ってる。


表情は変わらないのに、このかすかに感じられる苛立ちが私は凄く好き。


クセになりそう。


「あなただって女から吸血するじゃない。それと何が違うの?」


わざとそんな風に煽ってみれば、死体を飛び越えてきたその男に唇を塞がれた。


「もう黙れよ」


せめてもの抵抗として薄っすらと目を開けてみれば、青い瞳とかちあった。


お互い、ホントいい趣味してるわよね。


「んっ」


こちらを見つめたまま侵入してくる舌は、私の口の中をかき回していく。


唇が離れたと思ったら、口の端から流れていく飲みきれなかった唾液を舌で掬われた。


「あんたってホント淫乱だよな」


そう言いながらベットに誘導するあんたはどうなのよ?


それに床に転がっている男を殺した時だってそう。


返り血ひとつついてない綺麗なままのベットがいい証拠じゃない。


「そんな淫乱が好きなのは誰?」


答えなら分かっている。


だってそうじゃなきゃ、事あるごとに私の邪魔をしたりしないでしょ?


口の端を僅かに上げたシュウの唇に噛みつきながら、脚の上に跨った。







午前2時の誘惑
サキュバス×ヴァンパイア
翻弄されてるといい

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