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□逆巻家
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こめかみに銃を突きつけても、目の前の男には動じる様子は見られない。


分かってはいたが、いざヴァンパイアを目の前にすると、やはり人間とは違うのだと思い知らされることとなる。


「なぁ、あんた」


こっちは真剣だってのにダルそうな様子で口を開くその男は、動かないまでも何処か威圧感を醸し出している。


「何よ」


銃を構えたまま私は答える。


私より少し高めの位置にあるその顔は、殺すにはもったいない位整っていて


青い瞳からは何を思っているのか伺い知ることはできない。


「あんたさ、誰に頼まれたの?」


「は?」


「教会?それともアイツか?」


じっとこちらを見つめたままそう問いかけてくる。


アイツ?


アイツって誰よ?


何のことかと考えていると、返事をしない私に痺れを切らしたのか、男は溜息をついた。


「まぁ、どっちでもいいんだけど」


そして次の瞬間、私の手から銃はなくなっていた。


「なっ」


鞄からもう一つ、取り出そうと手を後ろに伸ばすと、目の前にいた筈の男は後ろに移動していて


私は自由を奪われていた。


「ちょっと、離しなさいよ!」


「やだね」


これはまずい。


ヴァンパイア相手に銃なしでなんて勝てるわけがない。


咄嗟に逃げようかとも考えたが、それは腕を斬り落とさない限りは無理だろう。


「あんたさ」


後ろ向きになっていた体は、拘束されたまま前を向かされた。


「ここで死ぬのと、餌になるの、どっちがいい?」


どっちも嫌に決まってるでしょ。


そんな精一杯の強がりを口にする間もなく、右肩に鋭い痛みを感じて私は呻いた。


「別に殺してもいいんだけど」


そう言いながら上目遣いでこちらを見るその男の口は、赤く染まっている。


吸血されてしまった・・・!


私は必死に男を突き離そうと抵抗したが、全ては無駄に終わった。


「あんた、ヴァンパイアハンターだろ?」


ようやく解放されたと思ったら、開口一番にその言葉。


ばれてたってわけね。


「ここで死ぬよりも、血を吸われた方があんたは苦しむんじゃないのか」


思わず顔が歪む。


任務をしくじっただけでなく、標的となっている人物に血を吸われるなんて屈辱的だ。


この男はそれを知っててわざと・・・


悔しくなり咄嗟に銃に手を伸ばすが、狙いを定める頃には男はその場から消えていた。


「またな、今度はもう少し楽しませてくれよ?」


嘲笑うような言葉だけを残して。







運命の輪
とあるハンターのお話
続きが書けそうな感じも・・・

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