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□逆巻家
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「愛してるよ、名無しちゃん」


ライトはいつもそうやって私に愛を囁いてくれる。


「君は僕のものなんだから、何処にも行っちゃだめだよ?」


私がもう何処にも行けないことを知っていてそんなことを言うなんて、ライトは意地悪だと思う。


『意地悪』っていうと喜ぶから言ってやらないけど。


「ねぇ、名無しちゃん僕のこと好き?」


好き。


私はライトのことが好き。


もう離れられないほど。


どうしようもない位あなたが好き。


「好きに決まってるよね。だってそうじゃなきゃここにいないでしょ?」


そうね。


好きに決まっている。


だけどきっと好きじゃなくてもここにいることはできるんじゃない?


私も少し意地の悪いことを考えてみる。


だってあなた、私の意思なんて考えたことないじゃない。


ライトが酷いことするから、そのお返しに言いたい放題。


そんな私の気持ちなんて伝わる筈もなくて、相変わらず彼は楽しそうだ。


「まぁ、今となってはどっちでもいいんだけどね。もう君を誰かに取られる心配もないし」


そう言ってライトは私の額に口付ける。


もう二度と動き出しはしない、私の体に。


血を一滴も残すことなく吸い取られて、何処にも行けなくなってしまった私の死体には


どうやら魂のみが残ってしまったようで、こうして留まり続けている。


それをライトは気付いていないのか。


いや、気付いていてあえて無視しているのかもしれない。


「生きていても死んでいても、僕は君のことが大好きなんだからさ」


動かない私の体を弄びながら、私の欲しい台詞を吐いてくれるライト。


早くあなたもこちら側に来ればいいのに。







生死問わず
ライトならきっと愛してくれるはず
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