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□逆巻家
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ぶっきらぼうで、何を考えているかなんて全然分からなくて


でもどこか優しくて、甘えたがりのあなたが大好きでした。


そして、これからもずっと。


「シュウ?」


隣で眠っている彼の名前を呼ぶと、煩そうに身をよじった。


「ん・・・」


「シュウ」


もう一度名前を呼ぶと薄っすらと目を開いた。


まだ頭がはっきりしないのか、眠たそうな目でこちらを見ている。


それはまるで子供の様で、思わず可愛いと思ってしまうのは内緒だ。


「ごめん、起こしちゃって」


「何?」


辺りは薄暗くなっており、私たちにとってはすでに活動時間と言った所だ。


とは言っても、ここでは時間など気にする必要もないのだが。


「あれ見て」


私は空を指さして、シュウの方を見た。


「あれは…」


「綺麗じゃない?」


この季節には珍しい流星群は、周りに明かりがない森の中ではひときわ輝いて見えた。


流れ星に願いを―なんて考えてもいなかったけど


もしかしたら叶えてもらえるかもしれない、そう思えるほど綺麗な星空。


「寒くないか?」


「え?」


星に見惚れていたから気が付かなかったが、私の手は痺れるほど冷たくなっていた。


なかなか自由に動かない私の掌を、一回り大きなシュウの手が包みこむ。


「俺より冷たくなってる」


「ほんとだ!シュウの方が温かい」


そういえば昔は逆だったな、そう思いながら手を握っていると少し引き寄せられた。


どうしたの?


そんな視線を送ると、少し切なそうな顔をしてこちらに目を向けてくる。


「名無し」


「何?」


「あんたは・・・俺とここに来たことを後悔していないのか?」


いつもは強引なくせにどうして時々そう言うことを聞くの?


まるで自分を責めるように。


そんなこと、考える必要はないのに。


「前も言ったでしょ?私は自分の意思でここに来たんだから。


それに私、今すごく幸せだよ?」


あの屋敷に来た頃は不安で不安で仕方なくて、泣きたいこともたくさんあったけど


そんなこともあったねって、笑えるくらい今は幸せに満ちている。


「・・・そうか」


「嘘じゃないよ?」


ヴァンパイアにとって、時間なんてあってないようなものかもしれないけれど


私にとっては1日1日が凄く大切で、かけがえのないものになるのだから。


この想いが少しでも伝わりますように。


そんな願いを込めて流れる星々に願いをかけた。







星に願いを
今日がとても悲しくて明日もしも泣いていても―
みたいな感じのお話

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