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□逆巻家
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骨ばった白い肌を指でなぞる。


背中の、ちょうど肩甲骨の辺り。


ここを触るのが好き。


妙に色っぽくて、それでいて私にしか見せないっていう独占欲に浸れるから。


「変態」


うつ伏せになったまま、顔だけこちらに向けたその男は、不服そうにそう呟いてきた。


だけど私は指を動かすことを止めない。


「いいじゃない。脱がせたのは私なんだから」


普段から着替えさせろだの何だの言ってくるのに、こういう時だけ我慢しろなんて可笑しいでしょ?


怠惰な彼に付き合ってあげる、いわばこれはご褒美なのだから。


私だけのものって感じていたいじゃない。


「ここのラインが好き」


そう言って上から下へ、骨に沿って指を這わせる。


もぞもぞと動くシュウの僅かな抵抗さえも愛おしくなってくる。


「おい、いつまで」


その言葉を遮るように背中に顔を寄せる。


冷たい体。


頬に当たる骨が、普段よりもより一層無機質なものに感じられる。


「ねぇ」


ベットの上に投げ出した、私より随分大きな手。


その上に自分の手を重ねて指を絡める。


何もかもが私の好きなものばかりで溺れてしまいそうになる。


「私以外の人の前で、こんな無防備な姿でいないでよ?」


この背中を独り占めできるのは私だけ。


そうじゃなきゃ意味がないでしょ?


耳元でそう囁くと、私の下にうつ伏せになっているその男は小さく笑い


気付いたら今度は私が下になっていた。


「やっぱあんた、変態だな」


「悪い?」


私の大好きな背中を見れなくなった今、仕方なく鎖骨を指でなぞっていると、楽しそうにそんなことを言われた。


いいじゃない、別に。


「貴方だって」


さっきから耳元に聞こえる水音は何?


柔らかい耳たぶも、耳の中も、舌で舐めつくされているのに、しらを切るつもりなの?


「シュウ」


名前を呼んで背中に手を回せば、耳元から唇は離れ、口元へと移っていく。


背中に手をまわして何度も深く口付ければ、自分の体がさっきよりも深く沈みこんでいくのを感じた。


ああ、やっぱり。


「好き」


やっぱり私は変態かもしれない。


こんなにも近くにある唇よりも。


私の髪に触れるその綺麗な掌よりも。


じかに手で触れている、あなたの背中に欲情しているのだから。







フェチズム
背中が好きです。特に骨のあたりが。
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