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□逆巻家
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私は何がしたかったんだっけ?


辛うじて動く頭を動かして自分の体を見てみれば、私の中にはふつふつとした疑問が沸いて出てきた。


体に巻きついた重い鎖。


どうしてこんな状態になったんだっけ?


何か大切なことを忘れているような、もどかしい感覚が離れない。


自分だけでは答えが出ないと悟った私は、傍にいた男に問いかけることにした。


「ねぇ、ライト」


「なぁに?」


私が話しかけると嬉しそうに顔を上げる。


さっきまで何やら本の様なものを眺めていたライトには悪いけど、どうしても気になるもの。


「あのね、私分からないの。どうして私―」


「どうして君がここで鎖に縛られてるのかって?」


どうして分かったんだろう?


私の考えてることは何でもお見通しってことかな?


理由は分からないがちょっと嬉しくなってうん、と頷いた。


「それはね、名無しちゃんがそれを望んだからだよ」


「私が望んだこと?」


そうだったけ?


私が望んだことは他にも何かあったような、そんな気がするんだけど。


私は考え込んでいると顎を持ち上げられた。


ライトの鋭い視線とぶつかる。


「ふふっ。君は僕のことが大好きなんでしょ?」


私はライトのことが好き。


それは確かな筈だ。


そう、私はライトのことが・・・


「だったら可笑しくなんかないよ?名無しちゃんの気持ちなら十分すぎるほど伝わってるからさ」


それでいいのかな。


うん、それでいい筈だ。


だって私はライトのことが好きだもの。


これで間違っていない筈だ。


「君はずっーとここに居ればいいの。ずっーとね」


幸せそうに足枷に舌を這わせるライトを見ていると、最初に感じて違和感などどうでもよくなってしまった。


そうだ、ライトが幸せなら何も問題ない。


彼の幸せが私の幸せだから。


ここにいれば私も幸せになれる筈だから。


何も心配などいらないのだ、何も―


まるで自己暗示をかけるように自分に言い聞かせる私を見て、ライトは鎖ごとぎゅっと抱きしめてきた。


「もう絶対に逃がさないからね、名無しちゃん?」


また逃げようものなら、分かってるよね?


ライトがそう小さく呟いたことを私は知らない。







ようこそ僕らの国へ
逃亡→失敗→監禁→調教
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