book

□逆巻家
15ページ/34ページ


「狂った世の中で狂うならば気は確かだ」


「何?」


「シェイクスピアの名言。素敵だと思わない?」


私が楽しそうにそう言うと、隣で寝ていた男は珍しく私の話に付き合ってくれた。


「そうだな」


「でしょ。まるで私たちを肯定してくれているみたい」


そう言って愛おしそうに手首にかかった手錠を眺めると、目の前の男はふっと口元に笑みを浮かべた。


「あんたは自分が狂ってるって自覚してるのか?」


自覚しているのか、ですって?


そう仕込んだのはあなたじゃない。


あなたが私を狂わせたのよ。


どうせ言っても否定するでしょうけど。


「そうね、狂ってるのかもしれない」


だって今までの私だったらきっとこんなこと望まなかったもの。


「でも、それはあなたもじゃない?」


あなたに飼いならされたいと思った私もおかしいけど


そうしたいと願ったあなたにだって責任はあるでしょ?


そう問いかければ、甘いキスが降ってきた。


引き寄せられれば、体を拘束している鎖の音が鳴り響く。


ガラガラと、それは重い愛の標のようで。


「俺を狂わせたのはあんただろ?」


ほらね、やっぱり。


それじゃ堂々巡りじゃない。


「シュウ、愛してるわ」


鎖なんてなくても私はもう何処にも逃げられないのに。


あなた以外の誰とも話さないし、誰の目にも触れようとも思わない。


あなたがいればそれでいい。


「だからもう離さないでね」


その首輪の先はあなたが持っていてくれればいいから。


私はずっとここで、あなたの隣で生き続けるから。


「当たり前だろ」


私についた枷を愛おしそうに撫でる彼は、きっと狂っているに違いない。







その枷を外さないで頂戴
どうしてこう狂愛しか書けないのか
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ