依存症

□ダンジョン攻略
1ページ/1ページ


かれこれ
家族の一員になってから
早一週間という時間が
流れまして

家族はみんな優しいものだから
私はすぐに打ち解けられた

そう、そして
今まさに今までで一番
かもしれない位重要な問題に
立ち向かっているんですよ

事の始まりは今朝のことだった
私は何気無くナースのお姉様方の
仕事を横から見ていた

カーミラ「真弓ちゃん、今手が空いてる?」

『はい!勿論ですとも!』

カーミラ「ちょっと頼まれごとしてくれないかな…?」

綺麗なお姉様にそんな
可愛らしい顔でお願いされたのだから
断れるわけもなく
その頼まれごととやらを引き受けた

カーミラさんから受け取ったカルテを
船医室に届けるという
なんともシンプルなお仕事

私は某テレビ局の
子どものおつかい番組の陽気な
テーマソングを口ずさみながら

まさにはじめてのおつかいに
意気揚々と出掛けた

そこまではよかったのだが
私の皆無に等しい方向性。
慣れない場所。
そして迷宮のようなこの大きな船。

これらのことが合わさり
私は今ダンジョンを攻略できないでいる。

簡単に言えば迷子だ。

もう嫌になってしまう
選りに選ってこんな薄暗い
気味の悪い廊下に迷い込んでしまうなんて

カルテを胸にだき
半泣き状態で私は進む

こんな迷子になった時は
止まっていても誰も
見つけてくれないのだから!

ぼんやりとしていて
先の見えない廊下

なんだか闇に飲まれてしまいそう…

そんなこと考えるだけで吐き気がする
私は闇には飲まれない
絶対に何があっても
家族も闇には飲ませない

そんな硬い決心もつかの間
もう心折れそう…

いつまで立っても景色の変わらない廊下
誰の話し声も聞こえない廊下
ひと気のない廊下

もういやだよぉ…

ついに私はその場にしゃがみ込んだ
も無理…

「真弓?こんなところで何してんだ?」

救済の手だ
私はすがるように抱きついた

『うわーん!ラクヨウさああああん』

ラクヨウ「お、おいおい!どうしたんだよ⁉︎」

『ダンジョンが攻略できないのおおお』

ラクヨウさんは
もう何が何だかわけわからん!
と言った顔で私を見つめた

ラクヨウ「泣くなよ、何があったかしらねぇが」

『あのですね、簡単に言うと迷子なの助けて』

落ち着きを取り戻した私は
ラクヨウさんから離れて
助けを求めた

ラクヨウ「迷子?どこ行きたいんだ?」

『船医室』

ラクヨウ「ここから先は武器庫しかねぇぞ」

『うそっ⁉︎私ちゃんとカーミラさんから聞いた道で来たのにっ⁉︎』

ラクヨウ「よくどうやって行くかメモまでとって置いて迷子になったもんだ…」

私にかかれば
こんなメモもただの紙切れに等しい
別にメモを見ないで
歩いていたわけではない
しっかりメモも確認した上で
迷子になったのだ

『すごいでしょ!』

ラクヨウ「威張るところじゃないだろ」

呆れたように笑って
ラクヨウさんは
船医室へ連れて行ってくれた

はじめてのおつかいが
完了したのは
頼まれてから3時間後のこと

今日学んだことは
決してもう1人で船内に入らない。

.

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ