「ちーっす!」


あの日は普段通り勢いよくbarの扉を開けたら上からベルが降ってきて、
あ、と思った瞬間前を向いたら
怖い笑顔を浮かべた草薙さんに絞められたのを今でも覚えている。


外は雪が降っていた、
息を吐くと気温が低いせいかそれも白い息と化して、
空中に溶けていく。
冷たい気候と止まぬ雪が何より冬ということを実感させてくれた。
吠舞羅の八咫烏こと八田美咲が若干凍って回転の悪いスケボーのタイヤに愚痴を漏らしながら歩いてbarまで来るはめになったのはその日の出来事、
自宅からbarまで何時もスケボーに乗って来ていたものだから久々の徒歩は案の定矢張疲れる、
先日購入した紅いマフラーを首に巻き結ってポケットに手を入れ込んで上着を羽織ったのだが冬の気候は侮れない、
非常に寒かった。
とbarにつくまでの災難を鎌本にまた愚痴っていると他人事のように笑われたものだから腹にめり込みパンチを食らわせてやった。


「八田さん痛いじゃないっすか!」


「人の災難わらってんじゃねえ!」


「いやだってΣ」



鎌本は冬にできるあの脂肪のお陰で助かったようだ
内心、残念な気持ちと安心した気持ちが交差して複雑な心境に陥るがまあ良いやと一人完結する。
眼前で腹を擦りながら苦笑う鎌本に此方もへら、と自嘲じみた笑みを向けたら
全く、と拗ねたような口調で鎌本が呟いてた、けど満更でもない面だったものだから俺は彼奴を見る目を変えた、
マゾと。


だんだん日が落ちていくにつれ下がってくる気温にとうとう溜め息を吐いていた昼、
草薙さんが暖かいココアを淹れてくれたときは危うく惚れかけた、
草薙さんマジイケメン、吠舞羅の妻。
「八田ちゃん寒かったやろ?」なんて気優しい言葉をかけながら眼前のテーブルにココアをおいてくれたんだそんなもの喜ばずにいられるものか。


「草薙さん有り難う御座います…!」


「ええよええよ、八田ちゃんが喜ぶなら俺も嬉しいわ」


「…本当そういう草薙さんマジ好きっす!俺」



草薙さんのサングラスのレンズが割れた瞬間だった。
“もう古いんやな”なんて呟きながら、床に散らばった破片を拾い上げている姿は忘れられない。


「いつか足開いてくれるとき待ってるからな八田ちゃん!」


なんて言葉を叫んだ草薙さんの頭に、
尊さんの右の靴がクリーンヒットしたことなんて衝撃的過ぎて最早記憶からきえない。
足を開くとやらも何を了見にいった言葉か、わかりかねない。
だが、今までみたことのないような笑顔で脳天が逝っていたので、安心した。


「八田、」


倒れ果てた草薙さんを横目に、尊さんが俺のほうに歩いてきては、頭にぽんと手を乗っけた。
其のまま、わしゃわしゃとニット帽ごと乱される。
乱雑な動きに驚くこともあるが、包容力のあるその手は妙に暖かく安心して気持ちよかった。





「え、えと、なんすか?尊さん、?」


いっこうに止まる気配のない相手の手にそろそろ心配になりゆるり首を横にへと傾ける。
すると急に周防は八田の細く艶かしい手首を痕のつくのでないかというぐらいの強い腕力で掴み引いては
店内のソファに連れて行き押し倒す。


「――ッ?!、みこ、とさんΣ、どうしたんすか!」



「八田、お前は大事なもん全部俺に捧げてもいいよな。」







「?、」




「だから、お前は「俺は尊さんに大事なものなんて全部あげますよ、!!」


突然訪ねられた言葉、
全くもって理解しがたい空気になりてはずいずい近寄りながら問いを投げてくる周防に矢張八田はおどおどとするが、
何れかも刻が流れれば平然としだして、
けろりとしたようすで忠誠を語る八田をみて、少々口角を緩めた周防は次に八田の膝を左右にゆっくりと開きながらに
その間へと己の躰を割り込ませる、
唐突のことにびくり肩を揺らした八田は当然表情は其の行動の意味が理解できていないようすで、
頬に熱が集結し真っ赤に紅潮している。
と。何時の間にするすると八田の服のなかに滑り潜った冷たい周防の手に気がついた。
こればかりはさきほどの反応では示しきれなく「離れてください」一言、かけようとした其のとき。
店内に入店する際になるドアについたベルがからんと鳴った。
同時に入ってきたのは、到底見覚えのある男で。


「みっさあーk「あ?」


羽目を外した声で店内に足を踏み入れた瞬間、周防の声と語尾が重なった、
そして次に目に入る組み敷かれた八田の姿をみた瞬間。


「猿?、「いやあああああああΣΣ」



突然発狂する伏見に驚愕してからに周防と場を引き剥がされる。
そのあと頭に拳骨をくらっては、ひりひりといたんだ。



「何すんだよ猿!!てかなんで此処に当たり前のように入ってきてんだよ裏切りモンが…!!」


正直、今の現状止めてくれたことには有り難く礼を言いたいところだ、
だが其以前に、何故伏見が此処に居り、
拳骨を繰り出されたのかを詳しく聞きたい、
真顔で佇む周防が何を考えてあの行為をしたのか、じゃれたかったのかはてな飛び交う空気を纏っては伏見に向き直る。
すると、八田の視線につられるよう伏見も八田の方面へと目をやってきた、
するとまたやがて表情が豹変して頬をつねられる


「だああああっ、いだいいだいいだだ!!!」


「美咲の阿呆!お前鈍すぎんだよ鈍感馬鹿!あほんだら!間抜け!」


「あ?、…ああ"?!!好き勝手言ってんじゃねっ、っていだいってあほーっ!!!!あほ猿ぅ!!!」


普段の味気無い表情とはまた今回は違って、珍しく感情が読み取れるような表情を物珍しげに見る暇もなく、
伏見とのやり取りが繰り返される、
伏見は手を止めることなく両手で八田の頬を左右ににょーんと自重なく伸ばす、
其の行為の痛みから八田の目尻は若干涙ぐみ始めるが、そんなものさきほどの行為とと比べればなんてことない、
といった風に全く気にしない様子を見せる伏見を見ていた周防は薄々八田に同情した。


「美咲ぃ?お前は俺のモンだろうがあ、なに他の男に襲われながらも、普通にいれんだよ…!!!何で抵抗しなかった、満更でもなかったのかよ」


「…は…、?なに言ってんだ尊さんは…!!!」


「尊さんは?、…ん?言ってみろよただじゃれてたんだとでも言いたいのか」


「あ、…あたりめぇだろ…、?」


「…、」


部屋に沈黙が広がる、
当の周防は飽きたようでカウンターに前のめりにうつ伏せになって既に夢の国に旅立っているし、
こんなときに限り草薙も鎌本もいない。
そんななかで、猿は口を開いては、


「美咲、勉強しようか、」






と、にっこり微笑んで八田を二階の空き部屋に引きずり込んでいった。







昼に響いた断末魔。

「離れろ変態糞猿似非青服ぼけああ!!!「美咲美咲美咲ぃいいい」






**********



遅くなりました…!ハスマ様リクエスト
病的に鈍感な八田ちゃんの総受けです。
ちょっと、いやかなり阿呆な子になってしまいましたゴメンナサイ!
最後の終わりかたは皆様の御想像にオマカセシマス(片言)

リクエスト本当に有り難う御座いました!!!





[TOPへ]
[カスタマイズ]




©フォレストページ