「美咲、何やってんだよ」


barの扉に背を凭れさせた猿比古が八田を視界に捉えながらにやり笑いて問う、
草薙は伏見の存在に気付こうと八田の頭から手を離そうとはせず寧ろ
鷲掴みにするような勢いで力を込めた。


「美咲い、お前はぁ?何俺以外の男にも躊躇いなく身体触らせてるわけかあ?」


「そ、そんなんじゃねえよ!」


相手の挑発するような物言いが癪に触れて
ガタンとカウンター席を立ち上がっては相手に吠えた、
すると先先迄八田の隣に腰を下ろしていた鎌本がサングラスのレンズ越しに猿比古を若干射ながらにテーブルに肘を置く。


「で、猿アンタは今更何しにきたんだよ」


「美咲に会いに来る意外に何があるってんだよ三下あ」


鎌本が猿比古に言葉を投げ掛けた時点で猿はカウンター席すぐ真ん前まで歩いてきていて、
八田のすぐ横にいた、
のを八田は今更に気づいてはびくりと肩を震わせ反射的に退く、
今にも何か仕出かしそうな猿の冷めた冷たい瞳が八田の真ん丸の瞳を迷いなくみればそれは堪らなくなり
視線をふいとそらした。
草薙はそんな様子をまたかも愛らしげに見詰めているものだからそれはそれは恐ろしい。


「俺意外に身体触らせちゃいけないっていわなかったかあ?美咲」


「いわれてねーよ、つかンなこと言われてようが聞かねーよ。何が嫌で草薙さんに触らせちゃいけないんだ」


「………あぁ。あーあー。成る程美咲って撫でられるの好きだったっけ?」


「は?」


なんや夫婦喧嘩かいな、
とカウンターから移動してソファに腰を下ろした草薙さんが此方をみて楽しげな口調で言っているのが耳にはいる、
眼前の猿なんて俺が撫でられるのが好きだなんて勝手に妄想しているし、
隣に座っている鎌本なんて俺の頭を撫でようと手を伸ばしてきていたからばしと払い除けてやった。
其にしても気に食わない、
のうのうと余裕をもっているこの室内にいる三名が、
というか室内の空気が重い云うならば泥々の修羅場の昼ドラのような、
そんな空気が漂っている、非常に不快だった。
ため息をはくと続いて双眸を眇たときだった、眼前にいた猿が八田の頭に手を伸ばしたのだ、
何かされるのではと思わずぐっ、と強く双眸を蓋したも
其の大きな手は八田のニット帽の下を潜り込んで少々赤みがかったネコ毛の茶髪の髪を擽っては撫でた、ふぁさ、とニット帽が地面に落ちる。
それを拾おうと思ったのだが眼前の猿の性格に似合わず妙に優しく撫でるものだから少々気が狂い寧ろそれが心地好かったのが事実、
妙に気恥ずかしい今の現状をどうやって対応すればよいのか混乱した頭では解らず顔に熱が集まる前に咄嗟に
猿の手を振り払った。


「か、かかかっ…ッ勝手に触んじゃねえ!!」


八田が払い除けた猿の手は一旦やり場を失い静かにしたにだらんと下ろしたが
其の満更でもない様子の八田をみれば思わず笑いが表情に出ていた。


「美咲可愛い」


「ほんま、八田ちゃん可愛い」


「八田さんマジ天使」


「黙れえええあああ!!!」


こういうときだけ意見の一致するのが最早憎い。
可愛いなんて言われて嬉しくないし逆に格好いいと言ってほしい気で一杯だった。
無償に気だっていた其のとき。
頭上または二階でぎしりとスプリングが軋む音が聞こえた。
それは間違いなく八田の直感が間違いはしないもの。


「―――尊さん!!」


八田がいきなり叫んだものだから周りの猿たちが肩を揺らし驚いたのはノーコメントで、
八田の思った通り二階から欠伸混じりに降りてきたのは一点の間違いなく赤の王周防尊だった。



「よー尊、おはようさん」


「ちぃーっす!尊さん」


「…どうも」



猿がやけに八田の背後に隠れている気がする、
それを不思議に思った八田は小言ながらに理由を聞いたが無言で済まされた、
まあ其は裏事情である。


とにかくこの現状を打破するために周防の存在は必須だ、
すまないが話を変えるために利用させてもらいますご免なさいご免なさいご免なさい
と思考内で考えては
瞬時に行動に移るべく周防を視界の中心に捉えた。


「…尊さn「尊、おもろい話聞かせたろか」


勢いよく周防の名を呼んだのだが邪魔を受けた、
いや、
邪魔だなんて思ってませんよハイ。
八田が口をつぐんだ理由は草薙が周防に話を振ったから、
周防は若干興味なさげに草薙の方を見遣っては壁に凭れ掛かり耳を傾ける。
すると其を合図の様に草薙は口を開いた。


「八田ちゃんてー頭撫でられんの好きらしいわ」


全然面白くない話だったから驚いた。
ダメだ自分が不利になる話なんて終わらせる。
まずは否定から始めようと口を開いた。が


「草薙さん!好きじゃな…っ「そうか。」


咄嗟に口を開いたものの途中先程のように周防に遮られた。


「…へ?」


「八田、好きなのか。」


「え…っ、」


「撫でられるの、好きか」


「え、あ…ー。」


「……」


「えっと。」



率直すぎる問いにはたはた困って口をつぐんだらまた頭に手が乗った感覚がして
ゆっくり顔をあげたら八田の頭を撫でるのは周防の手だということがわかった。
しん、とした空気が場に流れる。
猿はまだ若干引き腰だし草薙さんはタバコに火つけてる途中だし
鎌本は鎌本だし。
八田を撫でる手はわしゃわしゃと髪をかき乱して雑だがなんとなく、
なーんとなく。


“やっべ尊さんに撫でられてるやばいこれは何、籤引きで一等を取ったときのような素晴らしい景品のような、つか尊さんマジイケメン大好き、手意外と大きいし、暖かいしマジイケボだし…や草薙さん本当ありがとう死んでも良いよ今なら死ねますよ尊さん尊さああああんんんんんんんry”


とかちょこーっとだけ気が動転するもまた先先のように正気に戻っては顔に熱が終結する。


「!!のわああああおおおおおおおっっっ」


勢いよく周防の胸板を押して距離を取る、
すると急に身体から力が抜けてぺたんと床にへたりこんでしまった


「どないした?!八田ちゃん」


「八田さん?」


「美咲、どうしたよ」





「……駄目、腰抜けたかも」


「「「は?」」」



腰に力が入らず立ち上がれない、
猿が心配したような素振りを見せつつなんとなく含み笑いを浮かべているのは気のせいだと思うことにしよう。
にしても非常に恥ずかしい、撫でられただけで腰が抜けて立ち上がれないなんて非常に恥ずかしい。
穴があったら入りたい、潜りたい、土竜になりたい。
今現在なんとなく予想がつくのは後で猿にさすがDTなんていわれるだろうとか
…いやどうでもいいから忘れよう。


「にしても八田ちゃんほんまかわええわ、ちょっともっかい俺にも撫でさせて」


やめてくれ。


「撫でられただけで腰抜けるとかまじさすがDT」


やだ今言われた。


「八田さんそんなときもありますよ、たぶん。…つか俺にも撫でさせてください」


同情すんな、………やっぱ有り難う。でも撫でさせない。
さわんなボケ


「八田、何やってんだ」


鈍感な尊さん、
ご免なさい今立ち上がりますから、本当今立つからああ















みんな、今日見たことは全部忘れよう。
















頼むからやめて。

(八田ちゃんほんまやば…ちょっ、写真取るからちょっと待って動かんといて)(まじやめてください…!)

























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紫音さまリクエスト
ツンデレかつ総受けの話です(´;ω;`)
駄目、総受けって、総受けってえええ
すごく美味しいシチュなのになんて駄文。

八田ちゃんが頭撫でられるのが好きと言うのが私の願望、
私の願望(何故二度言う
だからこの際書かせていただきました…!
要望に答えられたのかはわかりませんが…
とにかくごめんなさい←


この度は本当にリクエスト有り難うございました!(`;ω;´)





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