「のわああああぁああ!!!」






と、
bar HOMRAで叫び声が上がったのは早朝五時のことだった。
この時間帯だ、皆其々部屋で寝ているだろうに
朝っぱらから此の叫び声により夢の世界から現実世界へと引き戻され意識を覚醒させるはめになった。
まあ要するに寝るときは耳栓が必須ということだ。(※主は耳栓してません)



「どうしたん!」



どうやら其の叫び声は八田の声だったらしく、唐突の叫び声に真っ先に目を醒まし
真っ先に部屋から出てきたのは草薙だった、
まあつまり聴覚が発達しているということだ。
草薙は起きると部屋から出、一階所謂カウンターのある部屋へと向かったのだが、
其処で叫び声が八田のものだとわかったのは良いものの何か様子がおかしいことに気付く
八田が声の主草薙の方を振り向いたときにそれは気づかされた。



「く、草薙さぁん...」





「あれ…、あんさん…誰や」





其処にいたのは八田似の少女だった。









*********









一時の沈黙が流れた。
誰だと問われた少女は大きな双眸を丸々と見開き、口を開いて所謂絶望の表情とでも言うのだろうか、
まあそんな表情をしている。
草薙も草薙で誰だとは問うたものの後ろ姿は本当に紛れもなく八田そっくりだったものだから
此方を向いた彼女をみた瞬間、唖然とした。
でも目の前の少女は八田だ。
よくよく考えればそう長年の勘がいっているし、
何より八田センサーがそう告げている。
それとプラス店を開いていない今この現状で鍵もかけているのに不法侵入でもが出きる訳じゃない。



「…あんさん八田ちゃんなん?」



確信なさげにそう問うてみたら、目の前の少女の表情が明るさを取り戻した。








****








「誰すかこんな朝っぱらから大声で叫んだのはあ…」




八田似の少女が大声を出して草薙が起きてきて十分程過ぎた頃だった。
どうやら伏見が起きてきたよう。
髪の毛をくしゃくしゃと掻き欠伸混じりに階段を降りてきたと思えば
少女の姿を見ては双眸を見開いた。



「草薙さんてロリコry「変なこと言うんなら其の舌引っこ抜くで。」



少々本気混じった表情を草薙が浮かべた為
伏見も念にはと身をひく。
其の様子を呆れたように見詰めていた八田似少女はため息を浅く吐いた後
口を開いた。


「…草薙さんは兎も角、猿、お前煩くなりそうだからもっかい部屋いって寝てこい」



「…草薙さんだれすかコイツ」



「えっと…なぁ「皆さんお馴染み八田美咲だっつーの!」



ふん、と胸を張って高らかに言う八田、
草薙はその台詞を聞いてはやっぱりといった表情を浮かべるも伏見はその怪奇現象的な光景に信じられないといった表情を浮かべていた、
まあそれも無理もないことであり、朝起きたら八田が女の子になっていた、
なんてとんでもないニュースネタになる筈だそれもまあ叫ばずにいれた草薙や伏見が恐ろしく平常心で逆に素晴らしいと誉めたくなる。

草薙は八田の姿をまじまじと興味深げに見るやゆるく口角に曲線を描いて
柔和に瞳を細めさせた。



「八田ちゃんは女のコの姿になっても可愛いやないの、」



「へ?」



「べっぴんさんやね」


急にどうもこう顔に熱が集まるのを感じる、
それもどうしようもなく。
草薙の顔が鼻の触れ合いそうなくらい至近距離にあるものだから仕方のないことだ。と自問自答する
きっと冗談だと察するが矢張落ち着かなかった。



「く、草薙さん…!か、か…っからかうのもいい加減にしてくださ――っ」



「ははっ、八田ちゃんはほんまかわええな、からかっとるんちゃうよ本気や本気」



「へ?…っ…は…あっ?」



すっとんきょうで締まりのない声が出た。
それも女の姿になったときに声のトーンも少々高くなっているものだから甲高く。
へら、とまるで当たり前のことを言ったような笑みを浮かべる草薙を見たら苦笑いしか浮かばなかった。

と、そのとき。


今まで黙っていた伏見が二人の間に割り込むように入っては距離をとらせる。
不機嫌そうに顰めっ面を浮かべる伏見があまりに珍しかったものだから八田は思わず笑いを溢してしまったら
軽く頬をつねられた。



「…、草薙さんいくら草薙さんでも美咲は俺のなんで触らないでください」



少々普段より低温で話す伏見を草薙は物珍しそうにまた見るや否
くっくっ、と喉で妖しげに笑えば語を並べ。


「まったまたー、八田ちゃんは俺のやで?」



「いや俺のですね」




「いや俺のや」




「いや俺のだって」




「いやいや俺のやってば」




「いやいやいやいや俺の」




「いやいやいやいやいや俺のやね」




「いやいやry「いい加減にしろ、子供っすかアンタら」




まるでため息のつくようなしょうもない喧嘩に仲裁をしておく、
寧ろしなければいっこうに続きそうで虫酸が走るから。
睨み合う二人の様子を見たらまた反射的にため息がこぼれた。



「いっておきますけど、俺誰のものでもないんで。しいていうなら尊さんのものすから」



一応いっておこうと言葉を残しておいた、

のが悪かったんだろうに二人ともいつも伏せ気味な双眸を真ん丸に見開き硬直
そして

尊!!やら尊さん!!やら

叫んで周防の部屋に乗り込んでいった。














その日、草薙と伏見の姿はあれから一度もみなかった。
「鎌本ォー、草薙さんと猿は?」「見てないっすー。……て、っえ?誰」「俺だボケ!」









遅くなり申し訳ありません
猿→美←出のにょたをリクエストしてくださった匿名様へ!

なんか最後子供の喧嘩みたい、というかそうなってしまったのですが申し訳ありません…!

この度はリクエスト有り難う御座いました!






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