AmouR.
□#10.キッズトレイン
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文化祭前日。
賑やかに姿を変えていく廊下のトンネルを
少しうかれた慌ただしさが走り
みんなの顔はドキドキしたり
ワクワクしたり
イライラしていた…
「ゆーうーた」
「しゅーんちゃんっ!みうっちー!」
教室の小窓から千鶴と祐希が声をかけてきました。
悠「何やってんの、そんな小窓から…」
祐「密会」
千「あのねー、3人に見せたいものがあってねー」
廊下に出るように言われ、私たちは"?"を浮かべた。
千「じゃかじゃーん!オレとゆっきーの力作!地球に優しいエコトレインー!」
祐「この電車の半分は優しさでできています」
春「わ〜っ!それ、おばけやしきで使うんですか?」
千「え?使わないよ?」
「「『(使わないのにわざわざ前日に作ったんだ…)』」」
祐「悠太乗って乗ってー」
悠「んー…でも今準備中だし」
祐「…」
しゅん…
祐希は悠太に断わられ、淋しそうに項垂れた。
悠「じゃあ……はい。お兄ちゃん乗っちゃおっかな、ね、ゆうきくーん」
千「春ちゃんはオレの電車ねーっ」
祐「美雨はどうする?」
『
乗らないよ』
悠「俺と一緒に乗る?祐希が二人分の命を預かることになるけど」
『入らないよ、そんな小さなダンボールに!
それに!恥ずかしい!』
*
悠「じゃあ美雨は俺の後ろということで」
祐「枠外ですけどね」
『帰りたい』
祐「お客さんどこいきます?どこへでも行けますよ。決められたレールの上を走らないのがモットーですから」
悠「どこのドラ息子ですか」
春「あ、じゃあ東先生ところまでお願いします。ちょうど借りてた資料返しに行かないといけなかったんで」
千祐「ラジャーす」
悠「祐希は美雨と一緒にいたいんだと思うよ。だから付き合ってあげて」
『……寂しがりか、ばかゆーき』
ぷい。と悠太から目をそらすと、
ありがと、と言った悠太が頭をぽんぽん、と優しく手を当てた。
祐「ではエコトレイン発車しま
「どらあーーーーーーー!!!」祐「あ」
春「わっ」
『あ、春ちゃん』
ダンボールのなかで滑った。
ひっくりかえった、とも言えるかな。
祐「ちょっと千鶴、制限速度守ってよ」
千「おだまり!速さで負けてられっかい!
君たちはせいじいちんたらカメカメ走ってればいいさ!」
千鶴がそう挑発(?)すれば、
いきなり立ち上がった悠太は
ダンボールの底を開け、祐希と一緒に走ってしまった。
『卑怯な…』
走っている二人を見ていると、
悠太が片手で来て、とアピールする。
分かったよ、と心の中で呟き、
マイペースに歩く。
行く先々に悠太君と祐希君はどうしたんだ、
と話している女子たちの声を聞きながら。
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