AmouR.

□#04.麦藁色をかぶった少年
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悠「まだ?」

祐「…まだ」


「祐希決まったー?」


レジの方から小走りで寄ってきた幼馴染・夏目美雨。
彼女の腕の中にはさっき買ったであろう本屋の紙袋があって。

好きな芸能人の載っている雑誌なんだとか。


悠「まだなんだよね…ほらー美雨もう戻ってきたよ」

祐「んー」

「…長くなるようなら先帰っちゃうけど…いい?」

祐「あー…じゃああと5分待って」

悠「もー…」

「5分だよ。祐希。それ以降は待ってあげないからね」


さすが美雨。
祐希があと「5分」だって。




* * *




あれは、そう…小学生くらいのとき。


祐「悠太今日一緒に遊べないの?」


悠太が熱を出してしまったらしい。
顔を真っ赤にして、額に濡れタオルが置かれている。


悠「…祐希。ね、おかし、ボクの分も食べていいから…「うん」」

悠「…早いよ、返答が」


悠太がいない今日。
夏休みに入ったばかりだから、余計に寂しい。
公園には自分と同じくらいの子がたくさん遊具で遊んでいたり、おにごっこなどして遊んでいる。


「あ、ゆーき。ゆーたは?」

「美雨…悠太熱だして遊べないんだって」

「そうなんだ…」

「美雨。一緒にシーソーしよーよ」

「えーっと…シーソーは…やめとく」

「何で?」

「怖いもん」


苦笑いして、半袖の服の裾をぎゅっとする。
相当苦手なんだろうか。
苦手なら、無理に誘うのも気が引ける。


「…ん」

「あ、ありがとう」


手に持ってたビスケットの箱を美雨に差し出す。
すると嬉しそうに受け取る。

その笑顔が、可愛いな。なんて。


「!?」


突然、ぐんっとシーソーが動き、びっくりする。
向かい側には黄色い頭をした歳が近そうな男の子がいて。
にこっと此方に微笑んだのだ。


"一緒にやろーよ!"


「「!?」」

「ちょっと。何で美雨まで驚くの。フランスって国の言葉も知ってるんでしょ」

「フランスとは違うんだもん…わかんない」


ふるふると顔を横に振り、不安げな顔をして黄色い頭のした彼を見る。
彼は「?」を浮かべてこちらを見ているようで。


たん、たん


黄色い頭の少年は、シーソーを掌で叩いた。


「一緒にシーソーしようって言ってるんじゃないかな?」

「なるほど…」


シーソーを始めると、彼は楽しそうに笑顔で遊んでいる。
祐希は少し不安の表情だったが。
美雨はそんな2人を笑顔で見守った。






ガシャコンッ
軽快な音を立ててカプセルが出てきた。
その一部始終を黄色い頭の少年が食い入るように見つめている。


「…やってみる?」

「何事も挑戦!ってね」


祐希の勧めと、美雨の笑顔に、ガシャポンを回す。


"すごいっ!出てきたっ!"

「すごく嬉しそうだよ、祐希」

「うん、すごく良いな、ヒーローヤマトの完全体バージョン…」

「あれレアなの?」


目が点な美雨と、そのカプセルを祐希に向ける少年。
それを全て視界から外した。


(自分の力で手に入れてこそ…!)


ちらりと振り返ると、少年と美雨が笑いあっている。
言葉なんて通じなくても、遊べるなら、それでいいし。


「次は砂遊び?」


祐希と少年は砂でトンネルを作っていた。
ポンポン、と地味な作業を続けて、ようやく完成。


「うわっ……っとと…」


ちゃんばらで遊んでいた男の子が倒れこんでしまい、トンネルが崩れ去ってしまった。


「やべっ、ワリーワリー」


頑張ったトンネルを崩され、悲しそうに瞳を揺らす少年。


「…黄色君」


美雨の方を見ると、開き直ったのか、砂の上をぐしゃぐしゃと踏んでいく。
でも、祐希は。


ぽんぽん。


また、トンネル作りを始めだして。
少年も祐希を手伝った。

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