AmouR.
□#04.麦藁色をかぶった少年
1ページ/7ページ
悠「まだ?」
祐「…まだ」
「祐希決まったー?」
レジの方から小走りで寄ってきた幼馴染・夏目美雨。
彼女の腕の中にはさっき買ったであろう本屋の紙袋があって。
好きな芸能人の載っている雑誌なんだとか。
悠「まだなんだよね…ほらー美雨もう戻ってきたよ」
祐「んー」
「…長くなるようなら先帰っちゃうけど…いい?」
祐「あー…じゃああと5分待って」
悠「もー…」
「5分だよ。祐希。それ以降は待ってあげないからね」
さすが美雨。
祐希があと「5分」だって。
* * *
あれは、そう…小学生くらいのとき。
祐「悠太今日一緒に遊べないの?」
悠太が熱を出してしまったらしい。
顔を真っ赤にして、額に濡れタオルが置かれている。
悠「…祐希。ね、おかし、ボクの分も食べていいから…「うん」」
悠「…早いよ、返答が」
悠太がいない今日。
夏休みに入ったばかりだから、余計に寂しい。
公園には自分と同じくらいの子がたくさん遊具で遊んでいたり、おにごっこなどして遊んでいる。
「あ、ゆーき。ゆーたは?」
「美雨…悠太熱だして遊べないんだって」
「そうなんだ…」
「美雨。一緒にシーソーしよーよ」
「えーっと…シーソーは…やめとく」
「何で?」
「怖いもん」
苦笑いして、半袖の服の裾をぎゅっとする。
相当苦手なんだろうか。
苦手なら、無理に誘うのも気が引ける。
「…ん」
「あ、ありがとう」
手に持ってたビスケットの箱を美雨に差し出す。
すると嬉しそうに受け取る。
その笑顔が、可愛いな。なんて。
「!?」
突然、ぐんっとシーソーが動き、びっくりする。
向かい側には黄色い頭をした歳が近そうな男の子がいて。
にこっと此方に微笑んだのだ。
"一緒にやろーよ!"
「「!?」」
「ちょっと。何で美雨まで驚くの。フランスって国の言葉も知ってるんでしょ」
「フランスとは違うんだもん…わかんない」
ふるふると顔を横に振り、不安げな顔をして黄色い頭のした彼を見る。
彼は「?」を浮かべてこちらを見ているようで。
たん、たん
黄色い頭の少年は、シーソーを掌で叩いた。
「一緒にシーソーしようって言ってるんじゃないかな?」
「なるほど…」
シーソーを始めると、彼は楽しそうに笑顔で遊んでいる。
祐希は少し不安の表情だったが。
美雨はそんな2人を笑顔で見守った。
*
ガシャコンッ
軽快な音を立ててカプセルが出てきた。
その一部始終を黄色い頭の少年が食い入るように見つめている。
「…やってみる?」
「何事も挑戦!ってね」
祐希の勧めと、美雨の笑顔に、ガシャポンを回す。
"すごいっ!出てきたっ!"
「すごく嬉しそうだよ、祐希」
「うん、すごく良いな、ヒーローヤマトの完全体バージョン…」
「あれレアなの?」
目が点な美雨と、そのカプセルを祐希に向ける少年。
それを全て視界から外した。
(自分の力で手に入れてこそ…!)
ちらりと振り返ると、少年と美雨が笑いあっている。
言葉なんて通じなくても、遊べるなら、それでいいし。
「次は砂遊び?」
祐希と少年は砂でトンネルを作っていた。
ポンポン、と地味な作業を続けて、ようやく完成。
「うわっ……っとと…」
ちゃんばらで遊んでいた男の子が倒れこんでしまい、トンネルが崩れ去ってしまった。
「やべっ、ワリーワリー」
頑張ったトンネルを崩され、悲しそうに瞳を揺らす少年。
「…黄色君」
美雨の方を見ると、開き直ったのか、砂の上をぐしゃぐしゃと踏んでいく。
でも、祐希は。
ぽんぽん。
また、トンネル作りを始めだして。
少年も祐希を手伝った。
.