AmouR.
□#02.チューリップの咲いた日
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雪の降る寒い日。
雪に覆われたチューリップを助けようと、
手を真っ赤にしながら少年は頑張っていた。
『しゅんちゃん何してるの?』
小さな手で精一杯チューリップの種の入った土の上の雪を払っている。
「たっ大変ですよっみんなのチューリップ鉢に雪がいっぱい…っ。これじゃさむくて花咲かせられませんよ」
「あのなーしゅん。チューリップってのは案外強いもんなんだよ」
『そんなことしなくても雪が解けたら芽が出るんだって』
「そうなんですか?」
『うん。だからね、寒いから中入ってあったまろうよ』
立ち上がった少年の手は真っ赤になっていて、少し痛々しい。
『しゅんちゃん、お手てつなご』
「は、はい!」
「俺もつないでー」
「俺も混ぜろ!」
男だらけの中に一人の女の子。
その子の手は両手とも塞がれていた。
少女はふと周りを見て首を傾げた。
『あれ、ゆーたくんは?』
もしや、と振り返ると、しゃがんでチューリップ鉢を見つめていた。
『?』
後姿で、その少年の表情は見えなかった。
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