キセキと白猫

□憧れた瞬間
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「深織っち。今日一緒にマジバ、寄らないっスか?」


部活終わり、ボールのたくさん入った籠を用具倉庫に仕舞ってすぐ、涼太くんにマジバへ誘われた。


『…でも、征くんと帰るし…』

「今日だけ!今日だけでいいんス!お願い!」

『……』


顔の前できっちり手を合わせて、懇願してくる黄色いわんこ。
一向に諦める様子のない彼に、私は頷く。


『それじゃあ…ちょっとだけ。帰り…送ってね』

「もちろんス!深織っちとならいつでも一緒に帰るっスよ!」


ぱぁぁっと表情を明るくした。
そんなに嬉しそうにしてくれると、なんだかこっちも嬉しくなってしまう。
モデルの笑顔の力は侮れない。











いつも一緒に帰ってくれる征くんに、今日は涼太くんと帰ることを伝えた。


「…黄瀬と?」


怪訝な顔をして、ちらりと涼太くんを見た征くん。
私もちらりと見る。

彼は、とても嬉しそうに体育館を掃除していた。
モップをスイスイ〜っと動かしている。
そのせいか、先輩に「ちゃんとしろ!」と怒られていた。


「…ハァ。どうして黄瀬とマジバに行く事になったんだ?」

『え、っと……一緒に行こうって、言われたから…』

「深織は優しすぎる」

『う…』


腕を組んで冷めたような、真剣な瞳で見つめられる。
征くんは昔から一緒にいるけど、あまり考えてることがよく分からない。(いや、十分お前も分かんねえよ by青峰)

いい事を言われているような、説教されているような…。
そんな感覚になってしまう。


「俺もできるなら一緒に行きたかったが、これから用事があってね」

『そうなんだ…』

「…だから、アイツには気をつけろ」

『え、と…どうして?』

「それは……、っ」

『?』


僅かに頬が赤くなった征くん。
言おうとしたことを、なぜか止める。


「…深織に、手を出しそうで、心配だからだ…」


目をそらされて、言葉を終わらせるとさっきよりも赤くなった。
右手で顔の下半分を隠して、小さく言った。


『…手を、だす…って……?』

「(そういえば何も分からないんだった)」




赤司氏の不安は募る一方です。

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