キセキと白猫
□空と雲と彼
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さぁっと爽やかな風が吹く、屋上。
そこに彼女はごろん、と仰向けで寝転がった。
『わたがし…』
空に浮かぶ真っ白いそれを掴もうというように右手を上げた。
指先までピンと伸ばしても届かない。
「何してるんだ、深織」
『征くん』
「…また、雲をつかもうとしていたのか?」
『雲じゃないもん…わたがしだもん』
プクッと頬を膨らませる彼女を見つめる優しい深紅の瞳。
はいはい、と微笑を浮かべながら彼は彼女の隣に腰掛ける。
『いま、わたがしが私にいじわるするの…食べさせてくれない…』
「わたがしは深織が太ってしまうから止めてくれてるんだよ」
『そうなんだ…!優しいんだね、わたがし…』
にこりと微笑みかける彼女に倣い微笑む。
この和むような空気には「ほんわか」という言葉が似合っている。
百戦百勝をスローガンに掲げる帝光中バスケットボール部。
その部員である赤司征十郎。
冷静沈着ともいえる彼の性格に、完璧な頭脳、運動神経、身のこなし。
誰もが彼を次期キャプテンと信じている。
そんな彼が、あの彼女の前では違った。
「青峰っち、押さないでくださいっス!」
「押してねーよ!テツが押してんじゃねーのかよ!」
「僕は押していません。緑間君じゃないんですか?」
「俺は何もしていないのだよ。紫原じゃないのか?」
「えー、オレ何もしてないよー」
「皆シーッ!赤司君に気づかれちゃうよ!」
皆、赤司が怖いのか、影から2人を見守っていた。