短編:
□負けないくらい、想ってた
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今日は、"風刃"の争奪戦だった。
私は候補者のひとりだったんだけど、
序盤であえなく敗北した。
そのあとは、誰の手に渡るのか気になって最後まで観ていた。
『…!』
"風刃"を握り締めた迅が、
後ろ向きであるのにも関わらず、異様な雰囲気を纏っていて。
「名前」
横で観ていた太刀川が、
何もするな、行くな。というように私の腕を掴んだ。
『っ……でも』
悲しいかな。
寂しいかな。
育ての親だった"最上さんだった"それを握り締め。
いま、何を考えてるの
不意に見えた横顔は、
慈愛に満ちたような瞳で、
宙を見上げて。
その様子を見て思った。
迅は、私が守らなきゃ、と。
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