短編:
□好き!の伝え方10題
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抱きつく、
緑川駿
「名前さん模擬戦しよーよ!」
『緑川、私いま帰ってきたばっかりなの』
「えーー?名前さんならまだまだ体力ありあまってるでしょー?」
『……はぁ…5戦だけなら』
「ありがとー!名前さん!」
ぎゅっ
『わっ、ちょっと抱きつかないで。中学生だからって許されるわけじゃないんだけど』
「俺、迅さんの次に名前さんに憧れてるから。後輩には優しく!ね!」
『(カワイイなんて思っちゃ負けだ)』
4-1で負けた緑川。
「やっぱ強いなぁー名前さん」
『緑川』
「ん?なあに?」
『グラスホッパー、使い方よかったよ。あの場面ではもうちょっと瞬発力がほしいかったかな』
「…はい!」
どよどよと話し声が大きくなる室内。
第2の太刀川さんってのは伊達じゃない、
強くて、大人っぽくて綺麗で、
たまに見せる笑顔も、
編みこまれた髪のおかげで晒されている白い首筋も、
とても、キレイで。
ぼーーーっと見惚れている緑川に
名前は手を振る。
『おーい?緑川ー?』
「ね、ね、俺、名前さんのこと、本気で好きなんだけど、相手にしてくれる?」
『……』
素直に伝える中学生だ。
真っ赤な顔と恥ずかしさから目をそらしている。
『私、大学生…だし。犯罪者になっちゃう…』
「大丈夫!その時は俺が守るから、ね!」
まだ赤い顔で自信有りげに胸を張る。
頼もしい心構えだ、と名前は思った。
それと同時に、悪戯心が出てきて。
『年下はなぁ…厳しい、かも』
「えぇっ……!?」しょぼん。
落ち込んで、うつむく緑川に
びっくりする名前。
こうなるほど本気だったのだ、
と悟った名前は罪悪感でいっぱいになった。
『悔しかったら私の事、惚れさせてみせてよ、緑川駿クン』
「……!(頑張る!!)」
ふわふわな髪をぐしゃぐしゃに撫でてやりながら、顔を覗き込む。
*