迷宮の恋物語
□19.
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最近よく風斗の出るコマーシャルを見かける。
【あ、起きたんだね】
【愛してるよ、これからもずっとずっと……永遠に】
パンパシフィック・トラベルサーという旅行代理店のCMだ。
侑「お前、見すぎだろ」
『うるさい』
侑「双子同士共鳴することでもあったのか？」
『まあ…私なら毎日風斗にあの台詞言わせられるなあ…とは思ったよ？』
侑「うわあ……」
遠い目をして引け身を取る侑介。
私だって我ながら変な事言ったなと自負している。
右「風斗、大抜擢らしいですね」
コーヒーとジュースを載せたトレーをもって、キッチンから京兄がリビングにやってきた。
右「この会社は、今までアイドルをコマーシャルに起用したことがなかったそうです」
『そうなんだ…』
右「反対意見もあったらしいですが、結果的には成功したみたいですね。特にCMのロケに使われたニューカレドニアのリゾートホテルは予約殺到してるとか」
侑「はぁあ〜!?あんなクソガキのどこがいいんだか！」
雅「こら侑介。弥の前でそんな言葉遣いはやめてほしいな」
『そして私の前でも風斗の悪口言わないでください〜』
絵(ふくれた顔の空璃ちゃんかわいい…)
雅「それに、実の弟に対して言う言葉じゃないんじゃないかな？」
侑「う…。悪ぃ、言い過ぎた。空璃も悪かった」
雅「わかればいいんだ」
『わかればいいの』
雅「ねえ、絵麻。あのホテル、泊まってみない？」
絵「え？」
右･侑「!?」
雅「どうしたの？」
右「え、いくらなんでも、それは…ここで言うことでは、ないと思うのですが」
雅「そう？いいと思ったんだけどな。家族旅行で行くの」
右「…ああ、そういうことでしたら。わかりました」
絵「でも私、パスポート持ってないです」
『あ、私も持ってないよね…？』
右「そうですね。昔は幼くて家で留守番してましたからね。パスポートは必要書類を用意すれば一週間ほどで出来ますよ」
迷宮の恋物語【19】このパスポートが私たちの気持ちを大きく揺さぶることとなるのをこのとき、誰も知る由もなかった。
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