迷宮の恋物語
□16.
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京兄と絵麻ちゃんが朝ごはんの支度をしている傍ら、私は珍しく自力で早起きできたものだから、テーブルを拭いていた。
右「空璃、今日は早起きですね。これが習慣付けられれば嬉しいのですがね」
『えへへ…それはまたの機会に…』
曖昧な返答をすると、向こうから京兄のため息と、絵麻ちゃんの苦笑いが聞こえた。
迷宮の恋物語【16】右「絵麻さん。ほうれんそうを切ってもらえますか?ベーコンと炒めますから」
絵「わかりました」
『ほうれんそうとベーコン!?私それ好き!』
がちゃ、と扉が開いて、やってきたのは
眠たそうな雅兄だった。
絵「あ、おはようございます」
『おはよう、雅兄』
雅「おはよう〜二人とも。右京も」
うう〜ん、と唸りながら、
雅兄は伸びをした。
でもまだ眠そうだ。
右「昨日は夜勤だったんですか?」
雅「うん。夜勤するつもりは無かったんだけどさ、帰ろうとしたら急患が入っちゃって。さっき帰ってきたところなんだ」
『お疲れさま〜雅兄』
雅「ん、ありがとう」
私の頭を撫でてから、椅子に座る。
どことなくだるそうだ。
絵「だるそうですけど…大丈夫ですか?」
私の思いがシンクロしたように、
絵麻ちゃんが雅兄に聞く。
雅「ちょっとだけど、さっきまで眠れたから、まだ楽なほうだよ。
でもほら、なりたくて病気になる人はいないわけだし、まして僕が診るのは子供だからね。早く治してあげたいじゃない」
とても優しい笑顔だ。
右「正論だと思いますが、体調には気をつけてくださいよ。あと1ヶ月くらいですから。長男が欠席するわけにもいかないでしょう」
雅「なんの話だい?右京」
きょとんとした雅兄と、
顔を顰める京兄。
『雅兄、11月23日にお母さんたちの結婚式があるんだよ。それを京兄は言いたいんだよ』
雅「ああ、もちろん覚えてるよ。だって、昨日もそのせいで帰れなくなっちゃったから」
右「どういうことです?」
雅兄がいうには、
昨夜、お母さんから電話があったらしい。
式の準備は一通り終わっていること。
兄弟たちの予定はどうなのか。
雅兄はにこにこしているが、
京兄は浮かない顔。
右「私たちは息子なんですから、何かするべきでは…」
雅「母さんの言ったとおりだ」
右「何の話です?」
雅「昨日母さんが言ってたんだよ。右京が心配して、あれこれ言ってくると思うから、気にするなって言ってくれって。
さすが、母さんは分かってるよね」
右「雅臣兄さん…」
さすが、長男と次男だなあ、と思う。
結果、お母さんの結婚式はお母さんの好きなようにやらせよう、ということで収まった。
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